2023年度 活動レポート 第90号:鳥取大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第090号 (Aコース)

農村地域から循環型社会構築のための科学技術を学ぶ

鳥取大学からの報告

 2023年11月12日から18日の7日間、中国農業科学院農業環境および可持続発展研究所(大学院生4名、引率1名)とフィリピン・ベンゲット州立大学(大学院生2名、研究者3名)の合計10名を招へいし、鳥取地域が推進する循環型社会構築のための取り組みを体験学習しました。

■オリエンテーションと文化交流でアイスブレイク

 研修初日は、オリエンテーションと鳥取の循環型社会構築の取り組みに関する概要説明、および鳥取大学の国際交流グループによる日本文化体験会を行いました。概要説明では、中・比・日の学生混合でディスカッションを行い、研修の活動情報や関連する事前知識を身につけました。日本文化体験会では折り鶴を作成し、中国バージョンの折り鶴も代わりに教えてもらうなど、この交流によって初日の緊張がほぐれていきました。

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日本文化体験で折り鶴と飛行機作成

■循環型社会構築の取り組み事例を体験学習

 研修2日目は、鳥取のローカル酵母を利用した食品開発研究の説明と研究室訪問を行いました。実際に市販されているローカル酵母パンの試食を通して、地道な研究結果が地域の発展に寄与している様子を実体験しました。午後は遊覧船に乗り、日本海の荒波が形成した岩壁を見学したり、鳥取砂丘で夕陽を眺めたりするなど、鳥取の特徴的な地形や観光資源を体感しました。

 研修3日目は、地元養鶏場の6次産業化成功事例を見学するため、大江の郷自然牧場を訪問しました。取り組み背景や波及効果の説明を受けた後は、その日の朝採れ卵を使い、中・比・日の混合チームでバウムクーヘン作りを体験しました。一つの作業を協力して行い、参加者同士の距離がさらに縮まったようでした。3日目の午後は大学に戻り、地域課題となっている放置竹林を農業資材として活用する研究の説明を受けました。ここでは特に、土壌研究をしている参加者から多くの質問が挙がりました。

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バウムクーヘン作りで共同作業

 研修4日目は、地元企業が特許を取得している廃ガラス資材「ポーラスα」に関する説明と、その活用例を学びました。資材としての有効性だけでなく、ガラスの廃棄方法にも貢献していることを聞き、自国での応用の可能性に関連した質問が多く挙がりました。その後も、地元企業によるゼロカーボン農業とスマート農業の取り組みと、廃校を利用した植物工場での障がい者雇用機会促進の取り組みを見学しました。この日は地元企業が行う循環型社会構築のための科学技術を4つ体験学習し、地域社会に貢献しながら持続可能性を追求することの重要性について深く考える一日となりました。

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スマート農業のいちご農園の見学

■中・比・日混合チームの協働学習と成果発表

 研修最終日は中・比・日の混合チームに分かれ、まず1つ目の課題として「体験学習した7つの取り組み事例で共通する最も重要なこと」について話し合いました。驚いたことに、3チーム全てが「地域資源の有効活用」と「研究者と地域の協働」を挙げました。2つ目の課題では「取り組み事例から学んだ科学技術を自国の課題にどう活用できるか」を話し合い、最終発表を行いました。

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成果発表に向けた協働の取り組み
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 本研修では、参加者が「国籍や文化の違いを乗り越えながら、社会に貢献するために協働していくことの重要性を学ぶ」ことを一つの目標としていました。成果発表では、参加者が作曲した歌を「We are family!」と言って合唱しました。また、終了後アンケートには「参加者と知識を共有し協働したことが印象的だった」という感想があり、本研修によって、国を超えて協働することの重要性を学ぶという目標を達成できたと思います。今回深めることができた交流関係を、機関同士の関係性の発展に繋げていきたいと考えています。

 最後に、本研修の実施にあたり、参加者らに熱意を持って取り組みを説明してくださった先生方や地域企業の方々、そしてこのような機会を与えてくださったJSTさくらサイエンスプログラムに、心より感謝申し上げます。