2023年度 活動レポート 第81号:名古屋市立大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第081号 (Bコース)

居住者の快適性と認知能力向上のための室内湿度条件検討に関する共同研究

名古屋市立大学からの報告

 アリゾナ州立大学(米国)から2名の研究員が来日し、温湿度環境に対する人体の生理、心理、知的生産性への影響を調べる実験を実施した。具体的な実施内容としては、異なる室内湿度の環境下で熱的快適性および認知能力を測ることである。被験者を募り、6名の被験者から協力を得て延べ24ユニットの実験を実施できた。実験室内で温熱環境に対する主観的評価の調査、OSPANテストを実施して認知能力を調査した。実験室内の温湿度は温度26℃、湿度は40%~70%まで10%刻みで設定を変えて影響を調べた。

 アリゾナ州立大学から来日した2名の研究員と日本人学生が協力しあって実験の初期段階から準備作業を進めた。実験条件はすべてアリゾナ州立大学ですでに行った条件に合わせることにした。室温は26℃に維持しながら室内の相対湿度を40%から10%刻みで設定を変える必要があったがそれは容易なことではなく、実験用の簡易テント内に加湿器、除湿器、サーキュレーターを持ち込んで試行錯誤を繰り返しながら実験条件を整えた。また、テント内の色温度を規定の値にするためにシーリングライトを設置したが、異なる色温度を示したため、手作りのカバーを付けて設定値にするなど相互にアイデアを出し合って難題を乗り越えた。

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実験用簡易テントの様子
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被験者実験の実施

 さらに、被験者実験のための設問、SPANテストは英語になっていたため、日本語に和訳する作業を行った。暖かい、暑いなど細かな表現を被験者に適切に伝えるために丁寧に作業を行った。さらに、実験の一連の流れ、例えば、被験者に注意事項の事前連絡、当日の実施内容の伝達、実験室への誘導、ウェアラブル端末の装着など被験者実験を円滑に行うための運営を協力して行った。これらの作業を通して、被験者実験の実施に必要なノウハウの獲得と向上、共有を行うことができたことは大きな成果である。

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被験者実験を終えて

 被験者実験の結果は整理中であり、プログラム終了後詳細な分析を行う予定である。また、成果を論文にまとめて情報発信する予定である。これまでに結果の整理を行ってわかったこととして、室内湿度に対する人体の反応はこれまで知られているよりも感度が高いことを示す結果を得ている。例えば、同温度で相対湿度が60%を超えると心拍数があがり、温冷感、知的生産性に有意な差がみられる。また、このような傾向は女性に比べて男性により強くみられる。まだ詳細な分析が必要ではあるが、これまでの相対湿度に対する知見が乏しいなか、相対湿度に対する認識を改めるきっかけとなることを期待している。

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被験者実験の中間点検会

 プログラム期間中、来日した二人の研究員はZEB見学、犬山城と城下町の視察、研究室の懇談会などに参加してもらい、日本人学生との交流を深めた。特にZEB見学においては、地元の設計会社本店のZEB先進事例を見学し、コストをかけず建物のエネルギー性能向上を実践している事例を見る機会を得た。ZEBを実現するために必要な太陽光パネルの適正容量、自然換気と自然採光を最大限に用いる方策など多岐な話題に触れて情報交換を行った。また、質疑応答の時間にはユニークな発想をもつ質問が飛び出るなど、相互に刺激を与える有意義な機会を得た。

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ZEB施設見学

 本プログラム終了後も二人と当研究室との交流は継続しており、本プログラムの実施をきっかけに相手大学からの再来日についても模索している。なお、共同研究の推進は続くものと期待している。