2023年度 活動レポート 第75号:慶應義塾大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第075号 (Bコース)

台湾國立清華大学との共同研究プログラム
~機能性分子および生物化学に関する総合的研究~

慶應義塾大学理工学部
教授 山田徹さん、教授 高尾賢一さんからの報告

 2013年度から7年間継続して行っていた台湾國立清華大学と慶應義塾大学との夏季学生交流事業ですが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる影響で、2020~2022年度の3年間は実施できませんでした。しかし、ついに今年度は4年ぶり にJSTさくらサイエンスプログラムのご支援により本事業を再開することができました。

 7月3日に清華大学から5名の大学院生がYi−Chou Tsai教授に引率され、羽田空港に到着しました。いずれの学生も化学を専攻しており、それぞれの専門分野から受け入れる5つの研究室をあらかじめ決めておきました。まずは本大学理工学部の矢上キャンパス(神奈川県横浜市)近くにある国際学生寮に案内し、それから学生証を受け取り、本プログラムの始まりです。それぞれの研究室において、指導教員からこれから4週間で行う研究について説明を受け、早いところでは次の日から実験をスタートさせた学生もおりました。清華大学の学生にとっては慣れない環境での実験になりますので、慶應大学の学生は手取り足取り教えようと頑張ります。コミュニケーションの言語は英語ですので、お互い慣れない調子で会話を重ね、ときにはボディランゲージも使いながら研究を進めていきます。その甲斐あって、本プログラムが終了する頃には、双方の学生はスムーズに意思疎通ができるまでに成長していました。まさに、研究活動を通した国際交流が行われたと感じています。

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羽田空港に到着した一行と出迎えた学生たち

 また、7月11日には、ミニシンポジウムが矢上キャンパスにて開催されました。本シンポジウムは、昨年度のオンライン開催を含めると第9回開催となります。清華大学の5名に、慶應大学からも5名が加わり、合計10名により研究成果の発表が英語で行われ、学内から136名の聴講者が集まりました。各発表の後には活発に質疑応答がなされ、Tsai教授もその盛況ぶりに驚いておられました。初めて英語で発表する学生もおりましたが、みなさん一生懸命に発表し、質問に答えていたのが印象に残っています。シンポジウムの後には、感染症対策をとりながらミキサーが催され、両大学の懇親をさらに深めることができました。

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ミニシンポジウムの発表者と指導教員

 その2日後の7月13日には、日本化学会化学会館(東京都千代田区)に表敬訪問しました。澤本光男常務理事と事務局の方々にご参加いただいた懇談会では、各々の現在の研究や今後の進路、台湾の就職事情などについて意見交換が行われました。これらの様子は同会ホームページにて記事が掲載されました。同日の午後は、地下鉄にて慶應大学の三田キャンパス(東京都港区)に移動しました。創設者の福澤諭吉について説明を聞きながら、キャンパス内にある図書館旧館や三田演説館などの歴史的建造物を見学しました。その後は、すぐ近くにそびえ立つ東京タワーを見物してから横浜に戻りました。もちろん、この日以外にも週末には東京や神奈川周辺の観光を楽しんだと聞いています。

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三田演説館の前で

 彼らの研究は7月28日まで続けられ、別れを惜しみつつ4週間のプログラムは終了しました。幸いなことに、プログラム中の事故や怪我、病気の罹患などはありませんでした。清華大学から派遣された学生たちは、高度な専門知識のみならず、日本の文化に大いに触れることができたと思います。また、そのような学生を受け入れて共同で実験した本大学の学生たちは、国際交流の意識をさらに高めるよい機会となりました。このように、本交流事業は両大学にとって大変意義深く、来年度の実施に向けて準備を始めているところです。あらためて、JSTさくらサイエンスプログラムに感謝申し上げます。