2023年度 活動レポート 第66号:桜美林大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第066号 (Aコース)

ベトナムとパキスタンの大学生らが6次産業と震災復興を学ぶ

桜美林大学からの報告

 本プログラムは、経営戦略・ファイナンス・事業再生などを専門とする桜美林大学大学院国際学術研究科所属の池田聡准教授が指導にあたり、プログラム全体のデザインやコーディネーションを担当した。「6次産業と震災復興」をテーマとし、農業の6次産業化の基本構造や経営戦略、営業戦略などに注目した。海外参加学生が、日本における農業の6次産業化(生産×加工×販売)の優れた取り組みを現地視察で知識的に且つ体験的に学び、6次産業化を震災復興の取り組みとして展開している企業の思いと手法について理解するとともに、茨城県行方市、および福島県楢葉町にある白ハト食品工業株式会社が運営するなめがたシロハトファーム、さつまいも芋畑、観光施設に加えて、東日本大震災・原子力災害伝承館などを視察することで、学んだ理論を体感した。また、グループワークを通して、世界各地で起こる大地震や津波、台風などの天災後の土地活用や地域活性化において、農業を中心とした6次産業化による雇用創出と経済活性化、所得向上の好循環モデルを考察し、他国でも展開できるかを考えるきっかけとした。

 本プログラムでは、主に白ハト食品株式会社より講師にご登壇いただき、企業や地方自治体の取り組み、生産→加工→販売までの一気通貫での農業の6次産業化、さらに進化した農の体験型エンターテインメント化の好事例を口頭で紹介いただくとともに、実際のフィールドや工場、販売現場などを視察させていただくことで、その発想や着想、戦略、仕組み、実践事例などを学び、各国の現状や課題、今後の展望に関する意見や質問、提案について活発に意見交換をした。

 茨城県行方市にある農業体験型テーマパーク「らぽっぽなめがたファーマーズヴィレッジ」では、地元自治体との連携を経て過疎化で廃校となった小学校を6次産業の舞台として活用することで合意し、農業を身近に体験できる季節折々の農業体験やグランピングなど、農の体験型エンターテインメント化の実例を紹介いただいた。地域の資源を最大限に活用し、持続可能な発展に貢献する手法として、多くの示唆を得ることができた。

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「らぽっぽなめがたファーマーズヴィレッジ」にて芋畑を見学する参加者

 楢葉町にある福島白ハトファームでは、東日本大震災で被災し、海水に浸かった土地を地元農家から借り上げ、従来東北以北ではほぼ生産されてこなかったさつまいも、およびさつまいもの苗の生産を2019年に法人化のうえ着手しており、被災時に他県へ移り住むことを余儀なくされた住民の雇用を含めて、震災復興支援を行っていた。参加者たちは、その被災し海水に浸かった土地での芋収穫を体験し、天災後の土地活用や地域活性化について深く考えた。そして、白ハト食品工業は、ベトナムやミャンマーをはじめアジア各国からの正社員登用を積極的に行っており、ベトナムからの参加者もその場でベトナム出身のスタッフと出会うことができ、日本で働くことについて、話が盛り上がった。

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芋収穫後白ハトファームのスタッフとの記念撮影

 その後、参加者たちは、福島県双葉町の原子力災害伝承館で原子力災害の影響やその背景、そして被災者やその家族の実際の声や体験を通じて、彼らが直面した苦難や困難をリアルに学び、感じることができた。館内の展示物や映像は、科学的な情報や専門的な内容だけでなく、困難に直面した被災者の生活や人道的な視点も非常に大事にしている。原子力災害のリスクや被害に対する社会的な理解を深めるための教育的な役割も果たしており、海外学生にとっては原子力発電に関する将来のリスク管理や予防について考える機会となった。

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原子力災害伝承館の見学記念撮影

 最終発表に向けての準備や最終意見交換を実施。グループごとに立案したテーマについて各自作成した資料を用いて発表し、参加した日本学生からもフィードバックがあった。6次産業と震災復興に関する議論が多面的・多角的に行われ、イノベーティブなアイデアが生まれ、研修の集大成に相応しい発表となった。

 参加をした招へい学生・教員の事後アンケートでの満足度は非常に高く、また留学や就職で日本に戻りたいといった声も多く寄せられた。今後の再来日や相互の学生交流、研究交流に繋がることを強く期待している。