2023年度 活動レポート 第61号:千葉工業大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第061号 (Cコース)

アジア海域におけるマイクロプラスチック国際共同モニタリングに向けての技術交流

千葉工業大学からの報告

 千葉工業大学は、JSTさくらサイエンスプログラムに採択され、2023年9月に10日間、フィリピン・サンカルロス大学およびベトナム国家大学ホーチミン市校工科大学から研究メンバー12名と引率教員2名を招へい致しました。当研究室が所持しているマイクロプラスチック(以下MPs)研究における試料採取および世界最先端の分析技術を参加者に体験、習得していただくことを目的とし、国際的な協力体制を築くための第一歩として実施しました。さらに、亀田研の学生が協力者として参加することで、細やかな質問にも対応が可能となり、同世代の学生同士の国際交流も促進できました。

【オリエンテーション】

 プログラムの初日、準備したスライドを使用して、自己紹介が行われました。趣味等も含めて共有し、参加者の間で笑顔が広がり、初対面でも打ち解けた雰囲気が生まれました。
 さらに、プログラムの主担当者である亀田豊教授から、プログラムの目的、スケジュールなどが説明されました。また、招待した学生たちを採取する対象のMPsのサイズ(大・小)に基き、国別に計4つのグループに分けました。

【マイクロプラスチック採取体験】

 9月12日に千葉県船橋市の河川まで公共交通機関(電車)を利用してサンプリング体験に行きました。

活動レポート写真1

 大型MPsグループでは、浅い河川に入り、プランクトンネットを手で固定し、川の流れを利用して試料を採取しました。招へい者も胴長を着用し、河川に入って採取しました。小グループは、手漕ぎポンプを使用して河川水を取り込み、プランクトンネットで濾過しました。晴天の中、屋外での共同作業で招待者たちに連帯感が生じました。

活動レポート写真2

【MPs分析技術の習得】

 採取体験の当日から研究室に戻り、試料の分析前処理を開始しました。当研究室の学生とともに数日にわたるMPs試料の前処理作業を行いました。四つのグループがそれぞれ異なるサンプルに取り組み、理論だけでなく、実際の作業を通じて技術を習得しました。

活動レポート写真3

 また、前処理後、測定機器と解析ソフトを使用して測定および解析を行いました。実際の解析結果から、サンプルのMPs濃度を計算するまでの作業は熱心なディスカッションを伴って行われました。

【衛星データを利用したプラスチックパッチ解析ソフトの紹介】

 当研究室が開発した衛星データを利用した解析ソフトDeMPSについて紹介しました。プラスチックパッチの解析方法についての詳細な説明とともに、各国の大学周辺の湾の解析結果を具体例として提示し、マクロプラスチックの汚染状況に関するディスカッションを行いました。湾周辺の土地利用情報なども取り上げ、プラスチックが自然界にどのように流出しているかについての情報を共有し、プラスチックによる環境汚染問題の現状について深く認識する結果となりました。

【成果発表会】

 招へい者4グループが、解析した千葉の川におけるMPsの汚染状況とともに自国のMPs研究の事例もあわせて発表報告が行われました。質疑応答を通じて、MPs調査の実験方法、意義、問題点等についての理解が深まりました。

活動レポート写真4

 今回の活動を通して、MPs調査の前処理や測定法などの技術的側面だけでなく、関連する問題に対する理解も深まり、今後の共同研究協力において有益な知見が得られました。さらに、来年度から両国において共同でMPs調査を行うことが決定しました。MPsの地球規模の発生源と推定されているアジアにおいて、日本がリーダーシップをとって各国の汚染状況調査が可能になったことは、アジアの海域のMPs削減を国際協調の元に実施できる最初の一歩となると考えられ、今回のプロジェクトが計り知れない価値があったと考えられます。

 最後になりますが、本プロジェクトの実施には、多くの方々にお世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。また、JSTに謝意を表し、本プロジェクトの成功に寄与していただいたことに深く感謝いたします。今後もこのプロジェクトを通じて築かれた国際的なMPs問題へのアプローチを継続し、共同研究体制を一層発展させていきたいと考えています。