2023年度 活動レポート 第54号:名古屋工業大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第054号 (Bコース)

マレーシアの若手研究者との共同研究プログラム

名古屋工業大学からの報告

 名古屋工業大学では、「さくらサイエンスプログラム」の支援を受けて、2023年9月17日から2023年9月30日までの14日間、マレーシアのマレーシアマラッカ技術大学から教員1名と大学院生(9名:前期課程6名、後期課程3名)を招へいし、共同研究および交流を行いました。

 農業廃材であるヤシガラを前駆体として活用してグラフェンの合成を行い、材料の観察と光分析実験を実施しました。本プログラムは、本田光裕助教(実施主担当者)が担当し、本研究室の学部および博士後期課程の学生がアシスタントとして参加しました。

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招へい者とマレーシアマラッカ技術大学の学部長Prof. Fadzli(右から4人目)

<1~2日目:来日、周辺施設案内>

 プログラム初日、アシスタント学生が、中部国際空港に到着した大学院生・教員(計10名)のお出迎えを行い、無事到着を確認しました。その後、ホテルに荷物を置き、日本の環境に慣れてもらうため、ホテルから本学への経路を確認するとともに街を散策し、昼食をとり、周辺施設の案内を行いました。次の日には、研究室や学内の実験設備と研究内容を簡単に紹介し、午後には、キャンパス内の施設と周辺施設の案内を行いました。

<3日目:講義>

 3日目の午前には、本学の種村眞幸教授(物理工学専攻)より、炭素系ナノ材料の研究動向と先端技術に関する講義を行いました。午後には、実施主担当者の本田より本プロジェクトの目的や実施内容についてのブリーフィングを行い、次いで、グラフェンの合成技術の基礎に関する講義を行いました。招へい者らから数多くの質問が有り、炭素系ナノ材料としてのグラフェンの基礎物理と合成技術に関する知識を深めました。

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種村教授による講義の様子
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本田(実施主担当者)による講義とブリーフィングの様子

<4~6、9~12日目:共同実験>

 本学研究室の学部・博士後期課程のアシスタント学生が、招へい者らに対して英語で実験内容の説明や装置の使い方等を説明し、化学気相成長法(CVD)の実験デモンストレーションを行いました。その後、ヤシガラを炭素源として利用したグラフェン合成のために、農業廃材のヤシガラとしてココナッツの皮を準備し、CVD合成実験および材料観察・ラマン散乱光による分析実験を行いました。①ココナッツの皮を実施主担当者が剥き、②料理をする要領で招へい者らが皮を乳鉢にてすり潰して乾燥させ炭素源として準備を行い、③実施主担当者・アシスタント学生の下でCVD合成を行うという連携により、見事に単層グラフェンが得られたことを確認できました。招へい者らは、ラマン散乱の原理やスペクトルの意味を学びました。アシスタント学生の指導のもとで実験データの解析技術を学び、これまで得られたデータをまとめて13日目のプレゼンの準備を行いました。

<7日目:見学>

 本学研究室の学部・博士後期課程のアシスタント学生による補助の元、招へい者らは、名古屋市科学館とリニア・鉄道館を見学し、世界トップクラスの安全性を誇る日本の鉄道網とシステムを学ぶなど見識を広げました。

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リニア・鉄道館の見学

<13日目:ミニシンポジウム、意見交換会>

 まず、招へいした大学院生が、本学で行った実験結果や学んだことを発表しました。講義内容で学んだことや実験目的・結果と考察が分かりやすくまとめられており、今後の共同研究に繋がる有意義な議論が行われました。その後、招へい者の教員(Dr. Nurhidayah Binti Ismail)に自身の研究内容を説明して頂きました。共同研究を通じた連携について具体的に議論を深め、"Resource−Applied Nanotechnology Consortium"の設立と将来的な共同研究のための協力関係を確認することができました。発表会後には、本学の学部生・大学院生(留学生を含む)や教員が参加して意見交換会を開催し、研究以外にも各国の文化や歴史などの情報を共有し、異文化交流を通して親交を深めました。最後に、本田光裕助教から招へい者全員に修了証とバッジが手渡されました。

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ミニシンポジウムにおける学生発表

 非常に短い期間でしたが、ディスカッションや共同実験を通して、農業廃材(ヤシガラ)を炭素源として利用したグラフェンの合成とトライボロジー応用のテーマについて、コンセンサスを得ることが出来ました。このような貴重な機会を提供して頂いたさくらサイエンスプログラム関係者の皆様に心より御礼申し上げます。