2023年度 活動レポート 第50号:東京理科大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第050号 (Bコース)

天然ナノ多孔質シリカを用いた安全安心な酵素デバイスの作製

東京理科大学からの報告

 2023年9月5日から9月16日まで、東京理科大学理学研究科物理学専攻梅村研究室が中心となり、インド(VIP−AP大学)から3名、フィリピン(ミンダナオ州立大学イリガン工科大学)から4名、ベトナム(ベトナム国家大学ハノイ校)から3名の学生と研究員および引率教員を招へいし、『天然ナノ多孔質シリカを用いた安全安心な酵素デバイスの作製』を実施しました。これは天然由来の藻類である珪藻の殻を用いることにより、安全かつ珪藻殻の優れた浮遊性と大きな表面積によってより優れた酵素デバイスの作成を目的としています。

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研究室内での共同実験の様子

 今回のプログラムは東南アジアの熱帯地域で得られる酵素であるパパインと天然ナノ多孔質シリカである珪藻を有効活用した酵素ナノデバイスの開発に役立つ情報を得てそれを作成することを意図して実施したものです。また、パパインのみならず、各国で得られる酵素を用いた共同研究を将来的に実施することも視野に入れ、実施しました。

 招へいした学生および研究員はいずれも初顔合わせであったため、9月5日から9月7日の3日間は共同研究の前段階として、すべての参加者が各自の研究紹介を行い、お互いの研究への理解と親睦を深めました。パパインなどの酵素は各国で非常に馴染みの酵素であるのに対して、天然ナノ多孔質シリカである珪藻はそうではないため、この期間の研究紹介はその特徴を理解するために大いに役に立ちました。

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研究紹介の様子

 9月8日、9月9日には、千葉県内の海岸で実際に天然ナノ多孔質シリカである実験で使用する珪藻を採集しました。9月10日以降は、採集した珪藻を培養して天然のナノマテリアルを精製し、パパイン酵素を結合させて酵素デバイスを作製する共同実験を学内で行いました。招へい者からは、「通常、人工的なナノマテリアルを研究材料としており、今回の天然ナノ材料を用いる工程は斬新に感じられる。」との声が聞かれました。

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千葉県内の海岸での珪藻採集の様子

 9月11日、9月13日には、日本科学未来館訪問、本学卒業生が勤務する会社見学を行い、日本ならではの科学技術に各国の人々は強い興味を示していました。本学卒業生の会社では実際に外国人が勤務しており、留学のみならず、その先日本で働くことも考えている学生にとって良い機会になったと考えています。

 将来的なバイオナノデバイス開発のためのアジア諸国のネットワーク構築に貢献したいと考え、プログラム終盤に日本への留学説明会を行い、各国からの留学システムなどについて詳しく説明しました。実際に梅村研究室に在籍する留学生の一人は、さくらサイエンスプログラムに参加して日本留学に興味を持ち、留学を決意した学生なので、このような留学説明会を行うことは非常に意義深いものであると考えています。

 また、今回のさくらサイエンスプログラムでは来日前後にオンラインによる交流を行いました。来日前のオンライン交流では日程の詳細を確認したことにより、来日した際に空港で円滑に合流することができました。来日後でのオンライン交流会では面と向かって言えなかったであろう正直な意見などを聞くことができました。招へい者からもオンラインで事前打ち合わせがあったおかげで準備などがしやすかったとの意見を多々もらいました。特に宗教の食文化については事前に周知していたおかげで問題なくプログラムを進めることができました。

 さくらサイエンスプログラムを通して、日本人学生が積極的に招へい者とコミュニケーションを取る機会を作ったことによりナノ酵素デバイスの開発のみならず、日本人学生の視野を広げる上で非常に役に立ったと思います。また英語でのコミュニケーションでは思っていたより意思疎通がとれることが分かり、学生の自信につながりました。このような交流のきっかけを作っていただいたJSTさくらサイエンスプログラム関係者の皆様に深く感謝いたします。

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日本科学未来館にて