2023年度 活動レポート 第39号:岡山大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第039号 (Aコース)

フィリピン共和国の薬学教育・研究・臨床の発展を指向した短期体験・交流プログラム

岡山大学医歯薬学域(薬)
助教 松本 准さんからの報告

 2023年10月15日から21日までの7日間、「JSTさくらサイエンスプログラム」の支援により、フィリピンのサンカルロス大学から6名(学部長、若手教員、大学院生2名、および学部生2名)を岡山大学に招へいしました。

 サンカルロス大学は、フィリピンのセブ島に4つのキャンパスを有する総合大学です。特に薬学部のレベルはセブ島の中で第一位であり、フィリピン国内でも常にトップクラスに位置しています。岡山大学とは2018年に大学間協定を締結しており、極めて良好な国際関係が構築できていることから、今回のさくらサイエンスプログラムの実施に伴い協定を継続することになりました。プログラムの目的は、岡山大学を中心として招へい者が最先端の薬学研究に触れることに加えて、岡山大学病院薬剤部および市内保険薬局の見学を通じて先進的な薬剤師業務を学ぶことで、次世代の薬学を担う優秀な人材を育成することでした。

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岡山大学薬学部にて

 研究交流においては、研究内容に基づいて研究室を基礎と臨床の2つに大別し、それぞれ複数の研究室を見学・体験してもらいました。基礎については、生物・物理・化学の3分野の研究室を訪問しました。それぞれ大きく異なる領域でしたが、招へい者はその全てに対して大変興味を示し、目を光らせて熱心にメモを取る姿が見られました。臨床については、患者さんの組織・血液を用いた研究や、近年目覚ましく発展を続けるビッグデータを活用した研究内容に触れ、臨床の現場に直結する研究の重要性や楽しさを学んでもらいました。

 岡山大学病院薬剤部では、日本における病院薬剤師業務の概要について説明を受けた後に、実際に薬剤部内を見学してもらいました。その中では、薬剤師業務の基本である調剤や抗がん剤のミキシングに加えて、治験薬管理に関わる薬剤師業務も見学してもらいました。招へい者は調剤に関わる最新の医療機器に加えて、岡山大学病院における治験の実施数に大変驚いた様子で、治験において薬剤師が重要な役割を果たしていることを深く学びました。

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岡山大学病院の正面玄関にて

 市内保険薬局としては、岡山県を中心として地域に根差した医療を提供しているおかやま薬局上道店を訪問しました。その中では、処方箋の受付から患者さんに薬を手渡すまでの流れを、模擬処方を用いて実演していただくことで、実際の薬局薬剤師の業務を細部まで知ることができました。また、近年の薬局薬剤師における重要な業務である在宅医療についての説明を受け、フィリピンにおける薬剤師業務との大きな相違を感じたようでした。

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おかやま薬局上道店における保険薬局薬剤師の業務見学

 上記の後、招へい者には今回のプログラムでどのようなことを学んだかを発表してもらいました。発表内容から、招へい者は日本の最先端の研究環境に大変驚き、日本で研究をしたいという気持ちの芽生えが見受けられ、また日本とフィリピンにおける薬剤師業務の相違についての説明があり、受け入れ側としても学びが多い発表会となりました。特に、招へい者の発表能力が極めて高いことから、受け入れ側としてもフィリピンの教育内容を見習う必要があると感じました。

 さくらサイエンスプログラムによるサンカルロス大学からの招へいは今回で3回目になります。新型コロナウイルス感染症の影響で一時招へいを中断せざるを得ない状況でしたが、今回無事に再開することができました。このような継続的な交流はサンカルロス大学のみならず岡山大学の発展にも繋がっています。また、岡山大学の教員が非常勤講師としてサンカルロス大学の講義を受け持つことや、岡山大学の学生がサンカルロス大学を訪問することで、学生の国際的な視野の拡充にも結びついています。今後も交流を継続することで、日本とフィリピンの交流を担う人材の育成が期待され、またその成果がさらなる薬学の発展に繋がることが想定されます。
 最後に、このような有意義な国際交流の機会を与えてくださったJSTさくらサイエンスプログラムに心より感謝申し上げます。

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文化体験として後楽園を訪問した招へい者一行と本プログラムの主担当者