2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第038号 (Cコース)
ドミニカ共和国数学教育インストラクター養成研修
~数学のおもしろさをわかりやすく伝える~
東京理科大学からの報告
東京理科大学数学体験館では、2023年9月2日から9月10日までの9日間、さくらサイエンスプログラムにより、ドミニカ共和国の青少年児童図書館数学体験館部、カトリカマドレマエストラ大学、サロメウレーニャ教員養成高等機関、ドミニカ教育省数学オリンピック委員会の教員・研究者10名を招へいし、標記研修プログラムを実施しました。
ドミニカ共和国を含めた中南米諸国の多くは数学教育を基礎とする科学技術水準が低い状態にあり、国家の発展のため数学教育を重視するドミニカ共和国政府は、本学の協力により2017年に創設した同国内の数学体験館を中心として、同国の数学レベルの更なる向上を図ることとあわせて、数学教育を積極的に進めたい意向を持っていることから、今回、本学の教授陣が中心となり「数学の面白さをわかりやすく伝える能力」養成のための体系的な講義を提供し、教員・研究者の能力向上を図ることとなりました。
【9月2日~3日】
成田空港に到着後、宿泊先である都内のホテル経由で本学の数学体験館や本学校舎・教室等を見学、また大学近隣にある靖国神社、日本武道館、科学技術館、皇居など首都東京を巡りました。
【9月4日~7日】
本学数学体験館において、国際化推進センター長の牧内博幸氏(元ドミニカ共和国大使)の司会進行のもとオリエンテーションを実施、今回の教育プログラムの主旨を確認した上で、秋山仁栄誉教授他による講義が実施されました。
- 「数学の威力を生徒に伝える実験」
- 「Mathematics behind some two−player games」
- 「初等教育に於ける楽しい算数(数学)の授業の工夫」
- 「データ科学を活用することで住みやすい環境をより多くの人が享受できるルールを考えよう」
- 「折り紙を楽しむ」
- 「数学的現象を観察するための数学ソフトウェアの活用」
これらの講義では、講義を聞くこととあわせ、数学体験館の教具を使い五感を総動員して行う学習や、数学の公式・数列・定理などを通じた理解学習、ゲームやロールプレイングを取り入れた分かりやすい授業の工夫、身近なものを用いて実際に手を動かし作品を作成し楽しく学ぶ教材の提案なども取り入れた体感学習を行うとともに、本学の学生たちが数学体験館の教具などを用いプレゼンテーションしながら招へい者とディスカッションを行うなどの交流も実施されました。
加えて、具体的事例に基づいたデータサイエンスの理解、最新のソフトウェアを活用したデータ収集など実践的かつ多岐に渡る学習も行い、数学教育への理解を深め、体系的な数学教育のスキルを学ぶことができました。
また、7日の夕方には都内のドミニカ共和国大使館へ向かい、ドミニカ共和国駐日大使を表敬訪問、今回のさくらサイエンスプログラムによる訪日内容を説明するとともに、貴重な情報交換を行いました。
【9月8日】
台風13号接近の影響により、午前中に予定されていた「算数・数学を含む理系に興味を抱かせる試み」を実践している都内の高校視察が中止となってしまいました。
しかし、午後に予定していた本学の教職員や学生も参加する「研修成果発表会」は予定どおり実施し、ドミニカ共和国駐日大使にも出席いただく中、サロメウレーニャ教員養成高等機関Layoner Minaya Duran氏からドミニカ共和国の文化・スポーツ・経済・教育環境などのプレゼンテーションが行われた後、研修内容についての意見交換と今後の交流・発展方策等について議論が行われました。また、ドミニカ共和国で親しまれているペアのダンスを披露、参加者の大学生と共にダンスを踊る一幕もあり、非常に有益な発表会・交流会となりました。
その後、修了証授与式が行われ、本学栄誉教授である秋山仁氏から「JSTさくらサイエンスプログラム修了証」が一人一人に授与されました。
一連のプログラムを終えた招へい者からは、「今回の授業は初等から高等教育までの数学教授方法を網羅した完璧なもの。各先生の講義はいずれも欠くことのできないもので、驚きの連続だった。」、「今後も多くの定理など一つ一つの説明方法について学習したいので、理科大の協力をお願いしたい。」、「このインタラクティブな授業をドミニカ共和国でも積極的に行いたい。」などの感想が聞かれました。
【9月9日~10日】
9日には日本科学未来館を視察するとともにお台場を見学、その後に浅草へ移動し東京スカイツリー、浅草(雷門、浅草寺)を見学し、帰国前日に日本の風景を印象に残す1日となり、10日に成田空港から帰国の途につきました。