2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第024号 (Aコース)
ラオスの学生が水環境浄化の技術を学ぶ
人間環境大学からの報告
さくらサイエンスプログラムの支援を受け、2023年9月23日から9月29日までの7日間、ラオス国立大学(ラオス人民民主共和国)から5名(引率教員1名/大学院生1名・大学生3名)を招へいし、環境浄化技術に関する交流・体験プログラムを実施しました。
ラオスは手つかずの自然が至るところに存在していますが、急激な発展によってそれらの自然が失われつつあります。都市近郊では広大な湿地が都市から排出される排水を処理してきましたが、その湿地も開発によって姿を変えています。浄化を担う自然の力を支援するための環境浄化に関する技術がラオスで求められるようになってきました。本交流プログラムでは、環境浄化技術とその評価に必要な環境分析技術を実践的に学ぶことを目的としました。
●調査・分析
愛知県岡崎市にあるダム湖(三和湖)にて、採水器を用いて水深毎の試料水を採取しました。同時にpHや溶存酸素量などの基礎的な分析項目の測定も実施しました。参加者は採水器を用いて異なる中層や低層の試料水の採水を行ったことがなく、採取した試料水が深くなるについて水温や濁度が変化することを実感していました。ある水深から溶存酸素量と酸化還元電位が急激に低下する現象について、現地で説明を行いました。
三和湖で採水した試料水を人間環境大学岡崎キャンパスのICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析装置で鉄やマンガンなどの8つの重金属元素の分析を行いました。ラオスで学んでいる検量線の作製や酸濃度の調整などはスムーズに行っていました。さらに、試料水中の農薬などの成分のスクリーニングを、愛知県立岡崎工科高等学校のガスクロマトグラフ質量分析計を用いて行いました。
●見学
名古屋大学を訪問し、水や大気の浄化に使用する材料の研究に関して実際の合成方法や使用する機器と分析装置を紹介しました。ラオス国立大学にもJICA等の支援によって分析器の整備が進んでいますが、学生が研究で自由に使用できる環境には至っていません。そのため、学生が自由に分析機器を使用できる環境に魅力を感じた様でした。2019年にさくらサイエンスプログラムに参加し、2020年から名古屋大学の博士後期課程に在学しているラオス人学生も参加し、日本での研究や生活について説明を加えて頂きました。日本での研究と学位取得の仕組み、奨学金の取得方法などについての質疑も行われました。
名古屋港水族館とその水処理施設の見学を実施しました。ラオスは内陸国であることから海を見たことがない学生もおり、海やそこに住む生物を不思議そうに観察していました。
修了式では、分析結果と日本での活動について4名の学生が報告を行いました。1名の学生はラオスの民族衣装で報告をしてくれました。
本研究交流プログラムでは、日本への留学に強い関心を持つ学生・若手研究者を中心に招へいしました。今回の来日をきっかけにさらに日本への興味を深め、日本へ留学するための勉学と研究に励んでいるようです。実験を指導した本学学生も実際に英語でコミュニケーションをとる難しさと楽しさを実感し、英語の勉強を進めています。本学学生の英語によるコミュニケーション能力の向上と国際感覚の醸成を促進する良い機会になりました。このような貴重な機会をいただけたことに、さくらサイエンスプログラムならびに関係者の皆様に深く感謝いたします。
愛知県立岡崎工科高等学校での分析と修了式は中日新聞の取材を受け、2023年8月30日(水)の中日新聞三河版の朝刊にその様子が掲載 されました。