2023年度 活動レポート 第20号:札幌開成中等教育学校

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第020号 (Aコース)

タイ、ベトナム、ザンビアの高校生との科学技術交流

市立札幌開成中等教育学校からの報告

<概要と特色>

 今年度は新型コロナウィルスのため4年ぶりの実施となった。タイのPrincess Chulabhorn Science High School Phitsanulokから生徒3名・教員3名(うち教員2名は自己負担)、ベトナムのTrần Đại Nghĩa High School For The Giftedから生徒3名・教員1名(うち生徒1名は自己負担)、ザンビアのDavid Kaunda National STEM Secondary Schoolから生徒2名・教員1名の計13名を招へいした。2023年7月20日~27日の7日間の日程で、本校の生徒を含め4カ国の高校生が日本の自然・文化・芸術が科学技術と関わり、私たちの生活をどのように豊かなものにしているかを考え、将来日本社会に貢献するアフリカ・アジアの優秀な人材と世界で活躍する日本人科学者を育む機会を設けた。

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北海道大学にて(折り紙工学の講義・実習)

 今年度の特色として大きく2点新しい試みを実施した。1点目がアフリカのザンビア共和国から招へいしたことである。コロナ禍以前はさくらサイエンスプログラムにおいてアジアの国々を主対象としてきたが、今年度はアフリカ地域が対象であることに着目し、高校としては全国初のアフリカからの招へいを実現した。そのメリットは至る所で目に見て取れて、講演後の質疑やディスカッションではザンビアの事例を交えながら具体的で深い議論が行われた。

 2点目がオンラインによる事前・事後学習の実施である。事前学習では自己紹介、研修の概要説明の他に、Zoomのブレイクアウトルームを使い本校のバディ生徒と個別に会話をする機会を設け、日本研修が実施されるときにはすでにお互いに打ち解けられているような環境を作った。また、事後学習では“水”に関する国際共同研究を2か月に1回程度オンラインで実施し、2024年3月に実施される本校のSSH成果報告会での発表を目指すこととした。そうすることで、7日間という限られた日本研修後も、引き続き日本に興味・関心を持ってもらい、アフリカ・アジアの生徒にとって日本が近しい存在になってくれると考えた。

<1日目>

 1日目朝、講演会の講師の先生が来校できなくなり、急きょプログラムを変更した。また、ベトナムからの招へい者が飛行機の遅延により、予定よりも4時間遅れたため、午後のプログラムに参加できなかった。開会式では、本校のバディ生徒と5・6年次生320名が集まり、開会式を実施した。招へい者自己紹介、本校の学校紹介ビデオ上映、本校代表生徒の挨拶の後に質問タイムを設け、交流を深めた。

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開会式

<2日目>

 北海道大学を訪問した。折り紙の技術を応用した細胞折り紙や宇宙開発についての講義を通し、日本の伝統文化である折り紙が科学技術として使われていることを知り、日本の科学技術に興味を抱く良い機会となった。また、北海道大学が実施している海外からの留学生向けプログラムについて説明していただき、北海道大学には日本語力を問わない留学コースがあり、招へい者の関心を集めた。
 ランチでは現在北海道大学に留学中の学生を招き、日本への留学方法や生活についてアドバイスを受ける機会となった。午後は、北海道大学低温科学研究所を訪問し青木准教授から極地研究の意義や成果についてお話しいただいた。招へい者の国はどこも雪が降らず極地での研究についてイメージがなかったため、質問タイムが盛り上がり、青木先生も驚いた様子であった。最後に−50℃の実験室に入らせていただき極地へ行った気分を味わった。

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低温科学研究所にて講義後も熱心に質問を続ける生徒たち

<3日目>

 本校で科学交流を実施した。はじめにタイからの招へい者と本校の6年次生が行っている国際共同研究の成果について口頭プレゼンを実施した。その後、各国で行っている課題研究についてポスター形式で発表会を実施した。その後、これから行う国際共同研究の概要について説明し、各国の“水”について自国でデータを取り、オンライン上で議論しながら2024年3月までに研究成果をまとめることを確認した。電子顕微鏡による実習では、光学顕微鏡しか使ったことのない生徒にとってはとても新鮮で真剣に取り組んでいた。
 昼食のそうめん作り、茶道部の生徒による茶道体験会などを通し、日本の文化にも触れる良い機会となった。午後は、事前課題として与えられていたパラシュートコンテストを実施した。与えられた条件下において、“よりゆっくり”そして“より正確に”的に向かって落ちてくるパラシュートを作った国が勝者となる。結果は、タイチームの優勝だった。

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帰国後行う共同研究で使用する実験器具の説明
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茶道体験
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パラシュートコンテスト

<4日目>

 終日、ホストファミリーと一緒に過ごし、札幌市内や近郊へ出かけた。ザンビアにはない水族館へ行ったり、花火をしたり、浴衣を着たり等々忘れられない1日となった。
 また、ホームステイを受け入れたバディ生徒たちは変化や違いを受け入れることに楽しみを見いだし、たとえ語学力が十分ではない生徒でも意思疎通を図ろうと努力する姿勢が見て取れ、将来、科学技術を通して世界で活躍するための資質を養う良い機会となった。

<5日目>

 5日目は有珠研修を実施した。本研修は本校のSSH地学野外研修に帯同する形で実施し、実際の火口や噴火時に被害にあわれた建物などを見学し、自然現象と自然災害について学習した。夕食後には参加者全員で火山のモデル制作や振り返りを実施し、研修で学んだことを整理し、意見交換を通し、考えをより深めていった。

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火山モデル制作

<6日目>

 午前中は苫小牧市にある日本CCS調査株式会社を訪問した。空気中の二酸化炭素を地下に埋めるという最新の技術を研究している施設において現在の研究成果や実用性、そして今後の展望についてお話しいただき、日本の技術力の高さに驚いている様子だった。そして、午後は東京へ移動し、チームラボプラネット東京を見学した。芸術が科学技術と融合し、新たな価値を創造し、人々の生活を豊かにしてくれることを改めて実感する機会となった。

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チームラボプラネット東京にて

<7日目>

 国立科学博物館を訪問し、自然科学に関する様々な展示を見学した。半日ですべてを見学できる規模ではないため、時間がなく「もっと見たかった」との声も聞かれた。

 今回のさくらサイエンスプログラムを通して、本校の1年生から6年次までの全学年とタイ、ベトナム、ザンビアの非常に優秀な高校生が北海道を舞台に、日本の自然・文化・芸術とそれに関わるサイエンスの学習や、世界最先端レベルの研究機関への訪問、ホームステイ等を通し、実践的で実りある研修を実施することができた。その結果として、将来日本社会に貢献するアフリカ・アジアの優秀な人材と世界で活躍する日本人科学者を育むことができた。また、今後実施する国際共同研究に、その成果が表れることを期待する。

 最後に、参加した生徒だけでなくこのプログラムに携わった教員にとっても大変意義のある7日間であったので、次年度以降も改良を重ね申請を続けていきたい。