2023年度 活動レポート 第18号:北九州市立大学

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第018号 (Aコース)

ベトナムの学生が公害を克服した北九州市の環境技術を学ぶ

北九州市立大学からの報告

 2023年8月19日にベトナム国家大学ハノイ校ハノイ科学大学3名、ハノイ建設大学2名、フエ大学2名の学生がNguyen Minh Khai副教授(ハノイ科学大学)、Nguyen Vieta Anh教授(ハノイ建設大学)、Le Van Tuan講師(フエ大学)の引率で来日しました。

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福岡空港に到着

 北九州市立大学は2010年頃からベトナムの大学と交流を深めており、特にハノイ科学大学・ハノイ建設大学・フエ大学・ダナン工科大学と多くの水処理・廃棄物処理の共同研究を進めています。これは、JSPS二国間交流事業、国土交通省下水道部受託研究事業、JICA−JSTのSATREPS事業、民間企業との共同技術開発に加えて、北九州市の国際事業とも連携したもので、ベトナムの環境汚染を低減する日本側の教育研究機関として大きな存在となっています。

 本学のさくらサイエンスプログラムは、ベトナム政府・日本政府の国費留学生候補者や本学への私費留学希望者を短期招へいすることで、これから開始していく大学院の共同教育や受け入れ研究室などにおける共同研究のマッチングと人材育成の方向を確実にすることを意図して実施するものです。ベトナムの大学は教育研究設備が不充分で座学が中心となっていることから、交流の計画においては、特に本学で充実している環境分析の実験実習をプログラムに組み入れるとともに、公害を克服してアジアの環境首都を目指す北九州市の関連施設視察を加えることで、研究と実務の融合を狙いました。

 招へいの学生はいずれも初来日となることから、初日と2日目は自然と歴史が豊かな九州北部の代表である太宰府天満宮・別府温泉・門司港レトロ地区を見学コースに含めました。そして、別府温泉では、温泉水(地下熱水)に含まれるスケール成分の分析実習・理論計算用に各地下熱水のサンプリングを実施し、現場見学と大学での実習を関連付けるようにしました。

 第3日から5日目は、環境化学系・バイオ系の3分野を中心に各種実験と講義を実施しました。都市の人口増加とインフラ整備のギャップが顕著なベトナムでは表流水の汚染が深刻になっています。これについて、北九州の公害問題解決を主導した門上名誉教授の講義を受けました。また、汚濁物質の処理は細菌を使ったバイオリアクタを用いることが環境工学の基本であることから、環境化学系のベトナム人留学生とバイオ系のベトナム人留学生が水の高度分析と遺伝子解析について実験の実習をそれぞれ担当しました。ベトナムの大学で受講機会が限られる実験の実習は、来日の学生のみならず、引率の先生方もたいへん楽しまれたようです。また、北九州市の下水処理場、下水汚泥の資源化プラント、日本有数のエコタウン(廃棄物再資源化施設)の見学を通し、産業活動と環境保全を調和させながら発展していこうとするわが国の地方都市の姿に感動を覚えたようです。

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水質分析実習
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細胞分析実習

 最後の6日目は、お互いの大学による学生研究発表会(口頭・ポスター)を開催しました。いずれの学生も相手の大学の学生に感銘を与えられるよう一生懸命に事前準備していた甲斐あって、通常の学会発表以上の出来映えになりました。研究発表会後は、さくらサイエンスプログラム修了証の授与式に移りました。

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招へい学生の研究発表
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北九州市大の学生も交えたポスター発表会

 最終日の夜は北九州市立大学の留学生と日本人学生による送別会で日本料理と各国の料理を楽しみました。6泊7日の日程はあっという間に過ぎ、今後の留学や共同研究トピックを思い描きながら、みなさんは無事にベトナムに帰国しました。