2023年度 活動レポート 第14号:福岡アジア都市研究所

2023年度活動レポート(一般公募プログラム)第014号 (Aコース)

福岡発、持続可能な都市成長を支える人材の育成

公益財団法人福岡アジア都市研究所からの報告

 福岡アジア都市研究所は、ハノイ在住の国際協力機関職員の協力を得て、ベトナム国家ハノイ校日越大学から語学堪能で優秀な学生および引率者(計9名)を受け入れ、持続可能な都市成長を支える人材の育成に関連した研修を実施した。

 研修プログラムの設計においては、日越大学の建学理念でもある「持続可能な発展とサステイナビリティ学」を念頭に置き、都市の成長に強く影響する経済、環境、福祉といった研修ニーズの高い分野を中心に、当研究所をはじめ、福岡市関係部署の担当職員、福岡市に立地する大学(西南学院大学、中村学園大学、福岡女子大学)の先生方からの講義や、日本人学生や国際学生とのワークショップを通して、最新かつ包括的な専門知識やスキルを習得できるように工夫を重ねた。
 特に、参加者へのオリエンテーションと振り返りを重視し、見たこと、学んだことから日本への留学や就職、さらに将来ベトナムおよびアジアでの地域貢献活動への応用などへの動機づけを積極的に行った。

 事前オンライン研修では、参加者に問題意識を喚起させ、来日後の各自の研修計画を準備させた。

 初日には、当研究所の研究員から「福岡市のアジア交流拠点都市づくり(都市政策)」についてレクチャーを受けたのち、参加者が準備してきた各自の研修テーマを発表し、問題意識と学ぶ視点・方法、さらにこの研修プログラムが目指すゴールの共有を図った。

 2日目は、福岡市の「水問題」対策(再生水事業)の現状と課題について市職員から説明を受けながら現場を視察し、その後「福岡とベトナムの環境問題」について福岡女子大学環境科学科の先生の指導の下、地元大学生との意見交換を行った。

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再生処理施設の視察

 3日目は、福岡市職員から高齢化問題と福祉政策の現状と課題に関する講義を受けてから、西南学院大学社会福祉学科の先生による指導の下、ゼミの日本人学生と「福岡とベトナムの福祉問題」と題したワークショップに参加し、活発に議論を交わした。

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西南学院大学でのワークショップ

 4日目は、福岡市職員による「福岡市の海外人材起業支援政策と展望」のレクチャーと福岡市の官民共働型スタートアップ支援施設の視察を行った。また、中村学園大学キャリア開発学科の先生から「福岡の中小企業のベトナム進出」についての講義を受け、日越間の経済交流や企業進出の現状と課題について学習した。

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スタートアップ支援施設での講義

 5日目は、福岡アジア都市研究所の研究員より「ウェルビーイングを目指す福岡市の新たな成長戦略」が紹介されたあと、研修成果の報告会が開催された。参加者が問題意識の整理をはじめ、テーマの絞り込みや議論展開のロジック等について、研究所の担当者から温かくも厳しい講評を受け、福岡で学んだことを振り返りながら、今後のキャリア形成や研究生活に活かす手がかりをつかめるよう、サポートをした。

 アジアのリーダー都市をめざす福岡市では、長年にわたりアジアから多くの留学生を受け入れてきた。また、福岡市と当研究所は、国際視察研修プログラムを通して、都市づくりの経験ノウハウを積極的に対外発信してきた。さらに、国際的創業・就業の国家戦略特区と認定されてから、福岡市はグローバル人材の育成と活躍の場づくりにいっそう積極的に取り組み、国際貢献を通じたビジネス展開を政策目標に掲げている。

 今回の研修を通して、ベトナムの優秀な学生たちが日本の大学の進んだ研究や教育を学び、住みよい都市づくりの現場を視察するだけでなく、日本人学生や国際学生とのワークショップ等の交流により、日本社会への理解を深め、日本留学のモチベーションの向上や、日本企業への就職など日越経済文化交流の架け橋となることも期待されている。

 我々も、ベトナムの将来を担う優秀な学生を積極的に受け入れ、教育や交流に向けた関係構築を目指すことによって、ベトナムをはじめ、アセアンそして世界に貢献し続けることを願っている。  最後に、このような貴重な機会を与えてくださったJSTに改めて感謝の意を表する。

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修了式にて