2022年度 活動レポート 第172号:佐世保工業高等専門学校

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第172号 (Aコース)

洋上浮体式風力発電から学ぶ島国ならではの再生可能エネルギー利用社会の実現

佐世保工業高等専門学校からの報告

 佐世保高専は、2023年1月15日から1月21日にフィリピン・イロイロ島にあるIloilo Science and Technology University(ISATU)から学生5名、Central Philippine University(CPU)から学生5名に各大学からの引率教員2名を加えた計12名を招へいし、再生可能エネルギーに関する科学技術体験コースの活動に取り組みました。

 今回の来日の目的は、長崎県五島市沖にある浮体式洋上風力発電設備を訪問し、島国ならではの特性を生かした再生可能エネルギーの特徴や仕組みを学ぶことです。また、水素エネルギー拠点となっている福岡県において、水素エネルギー製品研究試験センター(HyTReC)を訪問し、先端技術が社会実装されるために必要な試験の様子を視察し、再生可能エネルギー利用社会の実現に向けた取り組みを学びました。

 招へい学生一行は、福岡空港に到着した翌日にさっそく今回の目的の一つである浮体式洋上風力発電所「はえんかぜ」の視察のため、五島つばき空港に降り立ちました。浮体式洋上風力発電所は、福江港から約5km沖にあり、船で向かいます。あいにく当日は、波が高く出航ギリギリのコンディションでしたが、荒波にもまれながらも現場に到着し、海に浮かぶ巨大な風車を間近で見ることが出来ました。
 参加学生たちは、その圧倒的な迫力に驚きつつも、環境や生物多様性へ配慮した自然エネルギーの活用方法について、多くのことを学んでいました。風車は地元で組み立てられており、普段はなかなか見学することの無いバックヤードや、海上に風車を設置するための半潜水型スパット台船を見学することができ、浮体式洋上風力発電について、より深く学ぶことが出来ました。

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浮体式洋上風力発電所「はえんかぜ」の模型で説明を受ける様子

 その翌日、佐世保高専に来校した学生達は、フィリピンの民族衣装で中島寛校長を表敬訪問した後、キャンパスツアーに参加しました。本科4年生の高専生らとともに構内を巡りながら、先端機器や学生実験の内容を英語で紹介してもらいました。高専生の工夫を凝らした説明のおかげで、高専で行われている研究や学生実験を楽しみながら知ることができました。放課後に行われた歓迎セレモニーでは、夏にフィリピンに短期留学した本校学生4名とも再会することができ、お互いに満面の笑顔で喜び合う様子が印象的でした。

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キャンパスツアーの様子

 さて、今回の来日は、学生として浮体式洋上風力発電について学ぶだけではなく、先生役として現地視察を通じて学んできたことを本校の低学年生に教えたり、現実的な課題について、本校学生と共に話し合うプログラムとなっています。そこで、フィリピンの学生達はオリジナルの授業資料を準備して、1年生と3年生の高専生向けに特別交流授業を行いました。はじめはお互いに緊張気味でしたが、フィリピンの学生たちが馴染みやすい雰囲気を作り、分かりやすく説明してくれたおかげで、再生可能エネルギーについて学び、活発に話し合うことができました。本当に素晴らしい授業となりました。

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再生可能エネルギーの特別交流授業

 帰国前日には、水素エネルギー製品研究試験センター(HyTReC)を訪問し、水素関連製品の実証試験を行っている施設を見学するとともに、環境にやさしい水素エネルギー利用社会の実現について学習しました。理事長・センター長の渡邊征五様はじめ、スタッフの迫田様、鶴羽様(佐世保高専卒)が、水素エネルギーの重要性や今後の展望など、詳しく説明して下さいました。終盤には、水素燃料電池自動車MIRAIに乗車させて頂き、学生たちはその技術力の高さに感動していました。その後、学生達から水素エネルギーについて、非常に多くの質問がありましたが、一つ一つ丁寧に回答して下さり、感謝申し上げます。

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水素エネルギー製品研究試験センター(HyTReC)にて

 今回、本プログラムに参加した学生たち全員が初来日ということもあり、滞在中は、日本文化だけでなく、食事や生活、街並みにも興味を持っていました。常夏の国から真冬の日本に来ることも、楽しみにしていたようです。ある寒い朝、息が白くなることを教えると、みんなはしゃぎながら、その様子をスマホで撮影しており、微笑ましかったです。
 佐世保での文化体験の一つとして、長崎県伝統的工芸品に指定されている「佐世保独楽」の絵付けに挑戦しました。みな思い思いの色とデザインで、オリジナルの佐世保独楽をつくることができ、良い思い出になりました。絵付け体験の後、デモンストレーションで、巨大な佐世保独楽を回させてもらったときには拍手喝采、とても盛り上がりました。佐世保独楽本舗・山本様には、絵付けから佐世保独楽の遊び方までご指南くださり、ありがとうございました。

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「佐世保独楽」の絵付け体験

 以上、7日間のプログラムを終え、皆さん無事にフィリピンに帰国いたしました。今、両大学のあるイロイロ島でも再生可能エネルギーの活用が進んでおり、風力発電の風車が建設されているそうです。日本で学んだことや感じたことが、活かされることを願います。

 最後になりましたが、本プログラムの実施に際して、多くのみなさまにお力添えを賜りました。この場をお借りして感謝申し上げます。また、本プログラムを支援して頂いたJSTに厚く御礼申し上げます。佐世保高専では、引き続きJSTさくらサイエンスプログラムを通じて、国際的な教育研究活動に力を入れて参る所存です。