2022年度 活動レポート 第168号:桜美林大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第168号 (Aコース)

東日本大震災から防災への取り組みを学ぶプログラム

桜美林大学からの報告

 同プログラムでは、災害による物質的・人的損害を防ぎ、減らしていく為に必要な取り組みや、技術に関する知識をつける事を目的とし、米国オレゴン州にあるタイガード高校から学生10名と引率教員1名、計11名を招へいした。タイガード高校のあるオレゴン州では数十年の間にカスケード地震が起きる可能性が予見されている。その為、本プログラムに参加した学生の多くは、建物の耐震技術や津波・地震に関する備えについて関心のある学生であった。

 災害大国といわれる日本では、これまで多くの防災対策が実施されてきたが、東日本大震災ではそれでも大きな被害があり、更なる対策強化が進められている。本プログラムでは、気候変動と災害、復興支援を専門とする、本学の片谷教孝教授が指導にあたり、東日本大震災を事例とした講義を通し、津波や噴火による物質的・人的損害について学習した。

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片谷教孝教授による講義の様子

 同プログラムは昨年度、COVID−19の影響によりオンラインでの実施となったが、本年度は対面実施が実現した。対面での実施に際し、本所の防災センターでは、消火器を使った消火訓練や、水に浸かった車の扉を開き、水圧による影響を体感するシミュレーターを使った体験型学習を行った。また、日本科学未来館、そなエリア東京等の学外施設見学を通し、災害や防災に関する技術を体感した。上記で述べた体験型学習の中でも、静岡防災センターで行った、起震車を利用した震度体験は、普段なかなか地震が起きない米国の学生にとって貴重な体験となった。

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耐震性を図る建物の実験模型を組み立てる様子

 体験型学習に加え、同プログラムでは、実際に、耐震技術が使われている建物の見学として、東京タワーを訪れた。学生には、実際に東京タワーを訪れる前に、片谷教孝教授と共に、振り子を使った揺れの伝達に関する実験や、建物の耐震技術を測る模型を使った耐震性の比較に関する実験を行ってもらった。今回参加した学生の中には、建築家を目指している学生もおり、将来日本に留学し、建物の耐震設計を学びたいという声を聞く事も出来た。

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噴火の仕組みを学ぶ様子(静岡防災センターにて)

 タイガード高校では、日本語の授業も開講されている。同プログラムに参加した学生は、日本語の授業を第2言語として選択した学生であったため、日本語力向上の面でも、意欲のある学生であった。上記を背景に、タイガード高校の教員からは、日本語力向上のためにも桜美林高校の学生との交流時間を多く設けて欲しいという要望もあった。

 そこで、本プログラムの成果報告として、タイガード高校、桜美林高校の学生双方に、防災をテーマとしたプレゼンテーションの作成を依頼した。片谷教授による講義・実験、そして各所での防災に関する体験型学習を通した学びの成果として、タイガード高校の学生は、日本の防災・減災技術に関する発表を行った。さらに、日本では起こる事が稀な竜巻や、熱波に対してどの様な備えが出来るか、桜美林高校の学生に紹介した。桜美林高校の学生は、日本では稀な熱波や竜巻が起きた際にも、備蓄等の防災・減災に関連した道具(簡易トイレ、衛生用品等)が命を救う上でとても大切である事を、改めて実感した。上記から本プログラムは、日本側の学生にとっても、有意義であったと言える。

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消火器を使った防災訓練の様子(本所防災センター)

 学校や地域でどのような防災対策が必要とされているかをテーマとしたプレゼンテーション(最終成果報告)の準備に加え、静岡防災センターまでの移動時間や耐震性を図る建物の実験模型の組み立て、アイスブレイクを通した学生同士の交流・意見交換は、日本語の習得に加え、コロナ禍で限られていた人との繋がりを強化する上でも大変有意義だった。また、帰国後もやり取りを続けられるように、互いの連絡先やSNSのアカウントをシェアする学生も多く見られた。日本へ留学し、専門技術を学ぶ等、将来における更なる学びの促進に繋がる事が期待されている。

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起震車を使った震度体験(本所防災センター)