2022年度 活動レポート 第159号:新潟大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第159号 (Aコース)

アジアの若者が持続可能な農業と生物多様性保全に向けた佐渡島の取り組みについて学ぶ

新潟大学からの報告

 2023年2月26日から3月5日までの8日間、中国雲南省にある中国科学院シーサンパンナ熱帯植物園より中国人学生をはじめ、スリランカ、ネパール、タイから総勢11名の学生を迎えて研修を行いました。今回の研修では、新潟県の佐渡島の多様な生態系とその保全、森里海の繋がり等について学びました。

【里山パート】

 新潟大学佐渡自然共生科学センター朱鷺自然再生学研究施設でトキの生態と野生復帰に向けた取り組みに関するレクチャー、佐渡の国仲平野で休耕水田を利用したビオトープの見学および生き物調査を行い、かつては里山に多く生息していた生物やそれを餌としていたトキの保全や、生物多様性を維持した持続可能な農業のあり方について学びました。講義では、現在佐渡島内で繁殖・野生復帰が進められている日本の特別天然記念物であるトキについて、これらがどのようにして絶滅したのか佐渡や日本の里山の変遷と共に解説し、その後の野生復帰に向けた取り組みの紹介を行いました。生き物観察では、佐渡のNPO団体が管理するトキの餌場ビオトープを利用して、水生昆虫の観察等を行いました。参加者の中には昆虫を専門とする学生も多く、里山の生き物採集に没頭していました。

活動レポート写真1
里地ビオトープでの生物調査

【海パート】

 新潟大学臨海実験所にて日本海とそこに生息する生物の特徴についてのレクチャー、所内見学を行いました。その後、臨海実験所の教職員の指導の元、岸壁での生物採集を行いました。研修生の中には、初めて海を見る学生もおり、感慨深げでした。岸壁採集した生物は、室内で大まかに分類し、各生物について説明を受けながら観察しました。スケッチを取る研修生もおり、海の生物に対する関心の高さを伺うことができました。

活動レポート写真2
岸壁での生物採取

【森林パート】

 佐渡島の自然に関する講義を受けた後、演習林に所属する学生と実習参加者による意見交換を行いました。専門分野が異なる学生から多様な意見・質問が飛び交い、大変白熱した議論を行うことができました。室内での講義が終了した後は、新潟大学演習林において雪山登山を体験し、冬の生物調査を行いました。海の時と同様で雪を見るのが初めての学生もおり、雪の感触を楽しんでいました。また、登山の途中では演習林に生息する哺乳類の足跡の探索やネズミ類が貯蔵した木の実の採集を行い、佐渡演習林の自然の豊かさについて体験的に学ぶことができました。

活動レポート写真3
雪山での生物調査の際の集合写真

【東京パート】

 国立科学博物館を見学し、東アジアにおける日本の生態系や佐渡島の位置づけ、歴史的な成り立ちについて学びました。さらに東京大学小石川植物園において、主に絶滅危惧植物の保全における植物園の取り組みについて学びました。

 8日間の佐渡および東京での研修を無事に終え、全員無事帰国をしました。研修の中では、日本海地域の多様な生態系とその保全を踏まえた産業についての学びだけでなく、様々な日本の文化にふれる機会もあり、親交も深めることができました。今回の研修が将来、日本と各国との交流の架け橋になれば幸いです。