2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第151号 (Aコース)
「農免疫」を基盤とした農畜水産物の健全育成と食の安全
東北大学からの報告
現在の我が国における農産物、畜産物、水産物の生産は、農薬や抗生物質に大きく依存しております。食品に残留する農薬などによる健康へのリスクを低減させながら、持続的な食糧生産を行うことが次世代の農畜水産業に求められています。薬だけに頼らない健全な食糧生産を行うためには、知的・技術的な基盤を整備する必要があります。東北大学大学院農学研究科では早くからこの課題に取り組み、この問題を解決するためには、農学系の研究分野を横断的にまとめて推進する必要があると考え、この分野横断研究を「農免疫」と名付けて、基盤整備を進めています。
本プログラムにおいて、2023年2月10日から16日まで、台北医学大学の大学院生を招へいして、私たちの取り組みを紹介しました。また、2011年の東日本大震災の津波によって甚大な被害を被った、本学女川フィールドセンターを訪問して、これまで行ってきた震災復興の取り組みについても、オンサイトで体験してもらいました。
プログラムでは、まず、白川仁教授(附属食と農免疫国際教育研究センター(CFAI)センター長)がプログラムの開始宣言を行い、プログラムのスケジュール、仙台市内の状況、緊急時の連絡先などについて確認を行いました。続いて、東北大学や農学研究科の沿革、教育、研究などについて紹介し、さらにCFAIの概要とこれまでの取り組み、特に海外の大学・研究機関との共同研究によって進めている「農免疫」研究について紹介しました。その後、仙台市内に分散している東北大学の各キャンパス(青葉山、川内、片平)を案内しました。
次に、原田昌彦教授(CFAI副センター長)からゲノムの機能制御の観点から、食の安全性、機能性に関する講義を行いました。また、東北大学青葉山新キャンパス内に設置され、2024年度に運用を開始する次世代放射光施設(ナノテラス)の概要やこの施設利用によってもたらされる生命科学研究の大きな進展の可能性について説明がありました。その後、建設中のナノテラスを訪問・見学して、施設職員から、ナノテラスの各設備について、解説がありました。
続いて、戸田雅子教授(CFAI副センター長)から、食品成分の機能性、特に食品アレルギーやその他の免疫機能に影響を与える成分に関する講義を、仲川清隆教授(副研究科長)からは、食品に含まれる油脂の酸化とこれを高感度で精密に分析する最新技術と研究室で進めている研究についての紹介がありました。さらに、野地智法教授(CFAI副センター長)から、消化管の粘膜免疫系を調節することによる産業動物の健全育成方法について、自らの研究内容が紹介されました。また、研究室を訪問して、最新の機器を用いて行われている実験の様子を見学しました。
さらに、宮城県女川町にある農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センター(女川フィールドセンター)を訪問して、池田実教授(附属複合生態フィールド教育研究センター副センター長)から震災後の女川町をはじめとする周辺地域の沿岸産業の復興に対する取り組みと同センターの役割について解説がありました。また、女川町まちなか交流館を訪れ、震災前、震災時とその後の復興に関する展示を見学しました。
プログラム最終日に、修了式を開催してプログラム参加者に修了証を授与するとともに、プログラム参加の教員や関連研究室の学生との交流会が開催されました。限られた時間でしたが、両校の交流を深めることができました。
最後に、本プログラムの実施にあたり、多大なるご支援をいただきました、さくらサイエンスプログラムの関係者の皆様、また、プログラムにご協力をいただきました東北大学大学院農学研究科の教員、職員、学生の皆様へ、この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。