2022年度 活動レポート 第142号:海洋研究開発機構

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第142号 (Aコース)

日本とフィリピンの海洋・地球科学共同研究の機会創出

海洋研究開発機構(JAMSTEC)からの報告

 今回のさくらサイエンスプログラムは、JAMSTECにおける海底資源探査や海洋地質・物理探査の技術・機器のみならず、堆積物コアを火山噴火や大地震による災害の調査に利用する可能性についての関心を高めてもらうことを目的として実施されました。また、国際深海科学掘削計画(IODP)や深海探査から得られた新しい発見、特に生命の限界の延長について紹介しました。これらは、講義と実験室見学の両方で強調されました。

 JAMSTEC横須賀本部では、JAMSTECの研究者が日本の海底火山、津波記録、地震モニタリングの研究において採用している様々な物理・地球化学的手法を学びました。講演者のプレゼンテーションを通して、学際的な海洋地質調査を仮想体験し、過去50年間のJAMSTECの多くの技術的進歩と、今後の課題を確認することができました。また、写真やビデオでしか知らなかった機器の実物を見ることができました。JAMSTEC所有の船舶の一つである海底広域研究船 「かいめい」では、掘削や海底コア・岩石サンプリング・観測に使用する機器を間近に見ることができました。JAMSTECの研究者は、実験装置を見せながら、研究成果や専門知識を学生たちに伝えました。講義の後には、短いディスカッションやラボツアーが行われ、科学者との会話や質問応答の機会も多く設けられました。

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海底広域研究船 「かいめい」にて観測等に使用する機器を見学

 JAMSTEC横浜研究所では、気候変動、地震、津波、火山噴火などに対する地球の反応をモデル化・予測するためのスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を見学し、「地球シミュレータ」の運用を担当するエンジニアから話を聞く機会が設けられました。また、活火山である西之島でのドローンを使った物理探査についても学びました。また、横浜国立大学で博士号を取得し、JAMSTECの研究者とともに研究を行っている元さくらサイエンスプログラム参加者との交流も行うことができました。

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スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」の前で記念撮影

 日本科学未来館では多くの子どもたちの姿が見られ、参加者は、日本の子どもたちが幼い頃から科学技術に触れ、日本人科学者の科学的成果や進歩に触れていることに驚いていました。日本の科学技術の進歩はこのようなところからきているのではないか、フィリピンでもこのように子どもたちに科学技術教育を受けさせることができれば、などと感想を述べていました。

 JAMSTEC高知コア研究所では、国際深海科学掘削計画(IODP)で回収されたコアや、JAMSTECの地球深部探査船 「ちきゅう」による南海トラフの地震・火山・津波記録探査のコアを実際に観察しました。また、堆積物からの古地磁気信号の測定方法などを体験し、その測定方法も紹介されました。今回の野外調査は、実験室でのコアの観察を強化し、堆積物中の地震や津波のシグナルを認識することに役立てられました。

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研究者から海底堆積物コアの説明を受ける

 全体として、参加者はJAMSTECの研究者の研究成果や経験から学ぶだけでなく、研究室訪問や高知コア研究所でのコア記載の実体験に大変興味深く取り組んでいました。参加者全員が、将来、学生または研究者として日本に戻ることを希望し、また、近い将来、JAMSTECの研究者と連絡を取り合いたいとの希望もありました。

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実験室での体験を活かし、津波堆積物の野外調査を行う