2022年度 活動レポート 第134号:香川大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第134号 (Aコース)

レジリエンス・サイエンスリーダー養成を目指したリスク評価手法と減災対策を学ぶ

香川大学からの報告

 香川大学四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構では、南海トラフ地震等巨大化・広域化する自然災害や多様化・グローバル化する危機に対して、香川県はもちろん四国の防災・危機管理教育研究拠点の役割の強化を目的に平成28年4月創設されました。
 本機構では、地震、津波、高潮、河川氾濫等の自然災害、およびテロ、事故や犯罪等の人為災害から人々の生命や財産を守り、危機管理に関する学術的・技術的研究開発ならびに国内外を問わず人材育成を行っています。
 特に災害多発国であるアジア地域との連携に取り組んでおり、本年度の研修では、インドネシア、トルコ、バングラデシュの優秀な若者を対象に、レジリエンス・サイエンスリーダーの養成を目的としました。レジリエンスサイエンス(減災科学)リーダーとは、想定外の事態に対して地域社会全体の継続を目標に、危機を分析・評価し、適切にマネジメント(計画・実践)できる高度な対応能力を有する人材です。

 本年度は、1月20日~1月26日の期間、以下の3点に着目した研修を行いました。

  1. 減災科学に関する各国の実情理解と日本の先端的な教育研究・取り組みを学ぶことを目的に、先端科学を研究する講師からの講義と研修生相互国の理解、香川大学で防災・危機管理を学ぶ学生との研究交流を行いました。
  2. 減災未来社会を実現するために必要な工学的アプローチとしてのリスク評価を考えることを目的に、シミュレーション技術や可視化技術を活用したリスク評価技術に関する講義や教育訓練施設での訓練体験を行いました。
  3. リスク評価結果の可視化と減災対策、災害による被害を前提とした社会づくりのあり方(目標像)を考えることを目的に、既往災害における教訓の継承・復旧復興技術に関するメモリアルミュージアムの視察を行いました。

1 減災科学に関する各国の実情理解と日本の先端的な教育研究・取り組み

 講義では、世界最先端の地震津波シミュレーション技術や観測技術について学びました。研修生は日本における南海トラフ地震の想定津波や地震動をわかりやすく可視化したシミュレーションを視聴し、シミュレーション技術や応用方法について学びました。
 また、香川大学創造工学部防災・危機管理コースで防災・危機管理を専門的に学ぶ学生との研究交流を行いました。研究交流では、香川大学近傍の高松城周辺の現地調査を行い,地質学的観点や歴史的観点、治水的観点から地域の成り立ちについて現地で意見交換を行いました。本交流は、防災を学ぶ学生として相互に刺激になったと感想を得ました。

活動レポート写真1
レジリエンスサイエンス講義 コースリーダーの金田先生と
活動レポート写真2
香川大学創造工学部防災危機管理コースの学生と高松城下で防災まち歩き

2 減災未来社会を実現するために必要な工学的アプローチとしてのリスク評価

 講義では、気候変動による極端災害の現象理解やその対応策の検討手法、日本における防災教育の現状や課題を学びました。
 実習では、香川大学が開発したVR災害状況再現対応能力向上訓練システム体験を行いました。当システムは学校教員を対象に開発されたもので、学校等で災害が発生した場合の対応行動についてシナリオ型の訓練をVR映像により体験できるものです。本システムは、香川県教育委員会の教員免許更新講習でも活用されており、研修生は児童・生徒を対象とした防災教育に加えて、教員の災害対応能力向上の必要性についても理解を深めました。

活動レポート写真3
3D−VRで再現した小学校の教室での避難訓練体験

3 既往災害におけるメモリアルミュージアムの視察

 視察では、1995年に発生した阪神淡路大震災を学ぶことができる人と防災未来センターを訪問しました。兵庫県立大学青田先生から阪神淡路大震災の被害とその後の復興について講義を受けた後に、視察をすることで大変有意義な知見が得られました。

活動レポート写真4
人と防災未来センターの視察 大寒波到来のハプニングも

 また、本研修期間中に10年に一度の大寒波が到来し、道路の凍結・積雪の影響で公共交通機関が大幅に乱れ、円滑な研修の進行が危ぶまれるハプニングがありました。
 そのような状況の中でも研修生は常に明るく前向きに取り組み、臨機応変な対応行動をとっていました。
 JSTの皆様をはじめ、送り出し機関の方々、引率の先生方、香川大学の事務担当の方々、講義に協力いただいた先生方のおかげで、安全かつ有意義な研修を終えることができました。記して感謝申し上げます。