2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第131号 (Cコース)
環境汚染の疫学調査および汚染物質の免疫毒性評価法の習得
宮崎大学医学部社会医学講座公衆衛生学分野
教授 黒田 嘉紀さんからの報告
宮崎大学医学部公衆衛生学教室では、令和4年12月1日から10日の10日間に渡り、インドネシアのブラウィジャヤ大学医学部から教員4名、ポスドク4名および大学院生3名を招へいし、「環境汚染の疫学調査および汚染物質の免疫毒性評価法の習得」と題した科学技術研修コースを実施した。
本プログラムは、環境省が行なっている「子供の健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のサブユニットセンターを併設している宮崎大学医学部公衆衛生学教室が主催したことから、下記4点を計画した。
1)日本の文化交流(神話の世界を体験する—高千穂訪問、神楽見学)
2)日本の健康管理手法の見学(特定健診実施見学)
3)化学物質影響評価のためのコホート調査見学(エコチル調査見学)
4)化学物質影響の評価のための動物実験演習
しかし非常に残念なことに、12月2日に招へい者からコロナ感染者が発生し、その他の招へい者も濃厚接触者としてホテル待機となったことから、12月6日までプログラムを実施できない状況となってしまった。従って、残り12月7日、8日、9日の3日間について、可能なプログラムを実施した。
12月7日に公衆衛生学教室において、化学物質の影響を評価するための動物実験方法に関する演習を行った。動物実験の経験がない招へい者も多く、基本的な実験方法を共有したことは有意義であった。化学物質の免疫学的影響を評価するための、ELISA法や、蛍光抗体法等についても共有した。
適切なゴミ処理は環境汚染予防には非常に重要である。インドネシアは急激な発展および人口増加に伴う環境汚染問題が深刻であり、適切なゴミ処理は喫緊の課題である。多くの経験から、日本では適切なゴミ処理が進んでいることから、12月8日に宮崎市のゴミ処理施設見学を実施した。日本の進んだゴミ処理方法の共有と、ゴミ処理施設見学は、非常に貴重な経験になったとの感想が多かった。
12月9日に成果発表、意見交換会を行った。プログラムの半分以上が行えなかったが、初めての日本訪問を経験し、進んだゴミ処理方法に驚嘆したとの意見が多かった。化学物質の生体影響を評価するための動物実験を初めて経験する招へい者も多く、非常に有意義なプログラムであったとの評価であった。この経験を母国で活かすとともに、今後日本への留学や共同研究を望む声が多く寄せられた。
本プログラムでは計画の多くが、コロナ感染のため行えなかったが、招へい者には貴重な経験であったことが、それぞれの感想からも感じとれた。宮崎大学医学部とブラウィジャヤ大学医学部の今後の交流を望む声が多く、次年度も再度さくらサイエンスプログラムを行ってほしいとの要望が多く寄せられた。ちなみに、令和5年度宮崎大学医学獣医学総合研究科(博士課程)に4名の入学希望が寄せられたことは、このプログラムの成果と思われた。