2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第120号 (Aコース)
社会課題に挑む日本の中小企業〜女性経営者・社員がもたらす多様性の価値~
桜美林大学からの報告
本プログラムは、日本の中小企業研究を専門とするリベラルアーツ学群所属の堀潔教授が指導にあたり、プログラム全体のデザインやコーディネーションを担当した。「社会課題に挑む日本の中小企業〜女性経営者・社員がもたらす多様性の価値~」をテーマとし、高齢化・少子化問題を背景にした日本の国力減退を課題に据え、SDGsの「5. ジェンダー平等」「8. 働きがいと経済成長」に注目し、人材の多様性を活かして新しい価値創造を目指す国内中小企業と協働しプログラムをデザインした。本学協定校のオランダ、フィンランドのビジネススクールから教員・学生18名(うち1名自己資金参加者)を招へいした。オランダ、フィンランドともに人口小国であり、ジェンダー・多様な人材の活用を国力の充実につなげている両国である。本学学生も参加し、日本、オランダ、フィンランドの3カ国で学び合う環境の下、日本の学生とともに多様な人材が働く環境が企業や国の成長につながるモデルを模索することを目的として実施をした。
昨年度は、新型コロナウィルス感染症(COVID−19)の影響によりオンラインでの実施となったが、本年度は対面実施が実現した。昨年度のオンラインプログラム実施を契機に、2022年9月に東フィンランド大学教員が来日し、堀教授との共同研究および本プログラム協力企業視察を行った他、3大学でオンラインでの顔合わせやメールでのやりとりを通し、実施に向けて準備を進めてきた。
オンラインでの事前研修では、プログラム概要や来日に伴う手続きの説明、自己紹介および各国の文化紹介を実施した。さらに、来日後の参加者の主体的な参加を促し、学びの成果を最大化するため、昨年度オンラインプログラム実施時の講義動画を活用し、事前学習に取り組ませた。また、オランダのロッテルダム大学では、その講義動画を基に、担当教員による事前学習を実施し、日本のジェンダー平等の現状に関するInfographicsを作成しプログラムに臨んだ。
来日後のプログラムでは、ロッテルダム応用科学大学Kostas Kaimakis教授によるデジタルマーケティング、東フィンランド大学Katariina Ylönen教授によるリーダーシップ、同じく東フィンランド大学Markus Raatikainen教授による起業に関する特別講義を実施いただいた。フィンランド・オランダ・日本の学生による多様な意見を介した活発なディスカッションを通し、グローバルにビジネスを展開するための知識や視点を習得した。
また、国内企業・機関から講師にご登壇いただき、日本の事例を皮切りに、世界の少子化問題やジェンダー平等、女性の社会進出や女性起業家によるビジネス創出等に関する講演を受講し、各国の現状や課題、今後の展望に関する意見や質問、提案について活発に意見交換をした。
有限会社原田左官工業所原田宗亮氏(代表取締役社長)、株式会社豊和(DiNing+)山本美代氏(代表)、社会保険労務士法人ワーク・イノベーション菊地加奈子氏(代表)、一般社団法人日本跡取り娘共育協会内山統子氏(代表理事)といった企業・機関の皆さまに、想いのこもったご講演をいただき、この機会でしか得ることができない生の情報や熱量といったものに触れ、招へい教員・学生全員が感化された様子であった。
今回、フィンランド・オランダ・日本の大学からの参加ではあったが、そのうちポルトガルやスペイン、ブラジル、ブルガリアにルーツを持つ学生も参加をしていたため、各国地域の現状や課題を共有できた点がディスカッションを活発化させる有効な要因であった。より良い社会や世界の構築に向けた一人一人の思考や行動を考えるよい機会となったようである。ご講演いただいた企業様からも海外の学生の視点を得たことがとても新鮮で、参考になったとよいフィードバックをいただけた。
また、原田左官工業所での左官体験や、本学学生と企業周辺を視察する中で、日本の文化や社会を直接体験し、これまでの日本に対する固定観念が良い意味で払拭されたことや、日本の清潔で礼儀正しく、秩序のある国民性や環境に感銘を受けている学生も多く見られた。
今回、5名の本学学生がプログラム運営スタッフとして参加したが、本学学生にとっても語学学習に対する意欲向上や異文化理解の促進等、多くの良い影響がみられた。そのうち2名は今秋に交換留学予定で、1名も今後の留学を検討している。
参加をした留学生・招へい教員の事後アンケートでの満足度は非常に高く、また留学や就職で日本に戻りたいといった声も多く寄せられた。今後の再来日や相互の学生交流、研究交流に繋がることを期待する。