2022年度 活動レポート 第112号:福井大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第112号 (Cコース)

福井地場繊維産業のグローバル化および東アジアにおける人材育成

福井大学からの報告

 本プログラムは、東アジアの将来を担う若い学生が次世代の繊維産業を設計・開発するための実践的な知識や技術を研修することを目的としています。繊維産業は東アジアの主要産業の一つであり、世界人口増加が見込まれる将来においても重要な産業です。そこで、本学や福井県が強みとしている繊維科学を軸に、工学・ナノ・バイオ・化学など、異なる研究分野の研究者が一堂に会し、さまざまなアプローチで研究の相互交流を行うことで、それぞれが専門領域を伸ばすだけでなく、国際的な視野から繊維科学研究を俯瞰できる実践的なグローバル人材を養成することを目指しました。今回は、ベトナムのダナン大学工科大学、台湾の国立成功大学および国立中興大学、マレーシアのモナシュ大学マレーシア校およびプトラ大学、インドネシアのジェンデラルスディルマン大学の6大学から総勢13名(学生12名と教員1名)を招へいしました。中国・天津工業大学からも招へいを予定していましたが、残念ながらコロナによる渡航制限で今回の来日は叶いませんでした。

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福井駅前にて

 初日は、オリエンテーション・学内見学の後、福井県立歴史博物館を訪れ、着物や織物などの日本文化と繊維について学びました。翌日は、文化交流として、本学学生による案内で曹洞宗大本山の永平寺を訪れました。雪が深い境内を歩く経験は、東南アジア諸国の学生にとって忘れ難い貴重な経験になったようです。午後には、はたや記念館ゆめおーれ勝山に行き、機織りの体験等を通して伝統的な繊維産業である養蚕業について深く理解できたようです。

 3日目も文化体験として、養浩館庭園と福井市立郷土歴史博物館を見学しました。江戸時代の建造物である数寄屋造りの屋敷内では、畳や土塀の構造などの展示もあり、また福井市にまつわる人物や歴史についてもはじめて知り、関心を持った様子でした。

 4日目からは、実習に集中しました。まず、バイオ基盤技術として、タンパク質の精製と分析、およびバイオセンサーの作製と評価に関する実験を行いました。ここでは本学学生が中心に、実験を指導しました。実習分野の実験に慣れている学生と不慣れな学生が混在していましたが、互いに教え合うような光景も見られ、狙った相互交流が進んでいる様子が見られました。

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TAとのディスカッションの風景

 5日目は、本学が得意とするナノ繊維に関して実習を行いました。溶融静電紡糸によるナノ繊維の紡糸と解析技術に関する実習を行ったところ、レーザーを使った紡糸装置の仕組みには強い関心を持っていました。午後からは、溶液静電紡糸を3Dプリンタ技術と組み合わせてナノ繊維による3D造形を行うという目新しい実習内容に、関心を示していました。さらに、その医療応用についても解説すると、多くの質問が出ました。

 6日目は企業見学を設定しました。前田工繊株式会社と日華化学株式会社という、どちらも福井県を代表する繊維・高分子材料の研究型企業に訪問しました。招へい学生は、製品だけでなく製造技術にも興味を持ち、単に会社説明を聞くだけでなく、実際の工場・作業の様子を見学して、リアルな福井ものづくりを体験しました。

 プログラム最終日には、成果報告会を行いました。これまでの内容をまとめ、各大学のグループごとに滞在中の経験を発表しました。本学の学生が進行役を務め、笑いも起きるなど楽しい雰囲気で意見交換をしました。

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成果発表会にて

 1週間というごく短く限られた日程ではありましたが、本プログラムで実施した内容については、繊維を核として多様な分野との連携を図り、学際的な研究に取り組むという目的に対し、招へい学生のみならず本学学生もこの相互交流には得るものが多かったとポジティブな感想を聞くことができました。将来には、本プログラムを経験した学生による、繊維関連分野にとどまらない、様々な分野間での高度で多様な交流が展開されると信じています。

 このように大変充実した形で実施できたこと、関係者の皆様の多大なご協力、ご尽力に心から深く感謝申し上げます。