2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第111号 (Aコース)
令和4年度 高津高校「東アジア−太平洋高校生フォーラム」
大阪府立高津高等学校からの報告
本校では、韓国・フィリピンの高校生を招へいし、JST「さくらサイエンスプログラム」事業として「東アジア−太平洋青少年環境フォーラム」を、令和5年1月5日より8日まで3泊4日で実施しました。本事業では、台湾の高校生も招へいする予定でしたが、コロナ禍の影響により参加できませんでした。参加生徒は、韓国の完山女子高等学校が生徒5名、全州第一高等学校が5名、フィリッピンのアンジェリカム大学附属高校が4名でした。日本からの参加は、本校が26名、連携校である追手門学院大手前高等学校生が7名の合計47名でした。今回のフォーラムでは、環境に関する研修、講義、研究発表会などを行いました。
研修の内容は海外サイエンスツアーのための事前学習として、従来から行ってきた河川調査の研修をベースに組み立てたものです。2日目(1月6日)は大川(旧淀川、造幣局横)で河川水を採水し、現地で3グループに分かれて測定を行いました。初めて河川調査に取り組む参加者が多かったのですが、本校科学部生徒がTAとして各グループを丁寧に指導し、河川水のpHや電気伝導度の測定に加え、5種類のパックテストを用いたリン酸イオン、硝酸イオンなどの濃度測定も行うことができました。午後は、水質調査の測定項目に関する講義を受講した後、学んだ知識を活用して典型的な地下水、河川水、水道水などがどれであるかを同定する実験に各グループごとに挑戦しました。
3日目(1月7日)の午前中は、高価な測定器具が無くても学校で身近な環境のpH測定ができるように、水の測定に詳しい橘 淳治先生(神戸学院大学講師)のご指導で、色素を利用したpH比色管(4セット、測定範囲pH3.8~10.0)を製作しました。参加者は、薬品を加えるたびに美しいグラデーションの比色管ができていくことに、興味津々な様子でした。
午後は、新しい環境調査の手法として注目されている「環境DNA」について、この分野の先駆者である源 利文先生(神戸大学教授)の講義を受け、試料サンプリングの実習を行いました。この分野での研究は今後の発展、特に、貴重な生物の分布を調べる手法として期待されています。新しい技術で理解するのが難しい部分もありましたが、わかりやすい英語での講義で、参加者たちは理解を深めることができました。また、2日間すべての実習において本校科学部員が丁寧にサポートを行ってくれたので、研修の成功に大きな役割を果たしたと考えています。
本事業の海外招へい者対象の事後アンケートでは、「大変満足した」「再度来日したい」という回答が100%であり、また「環境DNAに関する講義に深い感動を受けた」(韓国)、「この交流は私の国際的な能力を高めてくれただけでなく、コミュニケーション能力や社会的スキルなども大きく向上させてくれた」(フィリピン)などの記述回答がありました。国内参加者対象のアンケートでは、「大変満足した」91%、「国際性の向上に役立った」96%、英語学習への意欲が増した91%、水質調査への理解が深まった91%、科学技術への興味が増した78%(以上、日本の参加者)などの回答があり、「科学を通して海外の同世代の学生と外国語でコミュニケーションをとる機会なんて、そうはないので参加して大変良かった」(日本)などの感想が寄せられました。また、全ての参加者が、今後もこのような国際交流を行いたいと希望を述べていました。これには、この事業の実施に向けて、事前に定期的に海外の学校とオンライン交流会を開催してきたことも、生徒どうしの交流やコミュニケーションにとって非常に良かったと感じています。
このような対面での国際交流事業の再開は不安もありましたが、生徒同士のいきいきとした交流の姿は、準備に関わった教員に対して、「この行事を実施してよかった」という思いを感じさせてくれるのに十分なものでした。本校では、参加者の安全の確保に十分に配慮しながら、今後も可能な限りこのような交流の場を設定し、生徒たちが国際交流や科学研究などに一層興味を持つことができるような取組みを続けていきたいと話し合っています。