2022年度 活動レポート 第106号:北陸先端科学技術大学院大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第106号 (Aコース)

JSTさくらサイエンスプログラムで国際的な研究活動を促進

北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアル・デバイス研究領域
准教授 山本 裕子さんからの報告

 この度、山本研究室では、JSTさくらサイエンスプログラム事業の支援を得て、インド工科大学ボンベイ校(Indian Institute of Technology Bombay)から留学生Paras Guptaさんを迎え、表面増強ラマン散乱についての講義および実習を行いました。プログラムは2022年12月18日~25日に行われ、山本研の学生や他研究室学生、インターンシップ生を含め計8名が参加しました。

 さくらサイエンスプログラムの特徴は、外国から学生や研究者を招いて共に研究活動を推進するだけではなく、日本の文化体験など草の根の交流も行うプログラムになっていることです。つまりさくらサイエンスプログラムでは、外国と日本との架け橋となる人材を招へいして共に研究を深めながら、その方々に日本そのものにも興味を持っていただく機会を作ることができます。

 そこで私たちも、今回のさくらサイエンスプログラムの中で大きく3つのコンテンツを遂行しました。

① 表面増強ラマン散乱という物理化学現象についての基礎講義および実習
② 日本の第一人者をそれぞれ1名ずつお招きし、発展講義および意見交換会を開催
③ 石川県金沢市にて、着物の体験と兼六園散策

 まずは招へい者である山本主導にて、①表面増強ラマン散乱の基礎講義および実習 を行いました。表面増強ラマン散乱は1970年代に発見された光に関する新規物理化学現象であり、銀や金など自由電子を豊富に含む金属表面にて、光学現象のひとつであるラマン散乱の起きる確率が最大で10の10乗にまで飛躍的に増強するという現象です。この現象について、既に出版済の基礎的な論文を数報示しながら、対面にて講義を行いました。続いて、銀ナノ粒子の作製実習と共に、表面増強ラマン散乱現象の観察とスペクトル測定を行いました。観察と測定は、世界的に見ても極めてユニークな単一ナノ粒子測定法を実装した自作の測定装置にて行いました。

活動レポート写真1
今回のさくらサイエンスプログラムに用いた表面増強ラマン散乱測定装置。
単一ナノ粒子測定が可能なオリジナルセットアップであり、世界的に見て極めてユニークな装置です。

 続いて、②日本の第一人者を招いての発展講義および意見交換会 を開催しました。世界的にみて広く研究の進められている表面増強ラマン散乱ですが、日本はその中で特に表面増強ラマン散乱現象のメカニズム研究や発展研究に非常に強い国として知られています。そこで本プログラムでは、日本の表面増強ラマン散乱研究の第一人者である尾崎幸洋先生(関西学院大学名誉教授)、および伊藤民武先生(産業技術総合研究所上級主任研究員)をそれぞれお招きし、オンラインでの発展講義および実地での意見交換会を開催しました。いずれも非常に熱の入った世界最先端のご講義を頂き、Guptaさんだけでなく、会に参加した学生全員がさらに深い学びを得た場となりました。

活動レポート写真2
意見交換会の様子。産業技術総合研究所の伊藤民武上級主任研究員をお招きし、表面増強ラマン散乱の最新動向についてご講義を頂きました。

 最後に、プログラムの締めとして③石川県金沢市にて、着物の体験と兼六園散策 を行いました。Guptaさんは着物を着るのが初めてとのことで、山本研の学生たちやインターンシップ生と共に貸衣装ショップでの着物選び、履物選びを楽しんだ後、選んだ着物を着て金沢市内を散策しました。続いて、日本が世界に誇る庭園の一つである兼六園を共に訪問。そして最後に、日本の金箔をどうしてもおみやげに持って帰りたいということで、費用についてインドにいる家族と電話で相談しながら食用金箔を購入。すっかり日本が好きになった様子でした。

活動レポート写真3
帰国前の金沢兼六園にて。着物と日本庭園を共に楽しみました。

 インド工科大学ボンベイ校は、世界の中で人材が特に豊富なインドの中でも上位校に位置する、重要な大学です。そして今回、さくらサイエンスプログラムで来日したGuptaさんは非常に優秀な学生ですので、今回の来日をきっかけに今後きっと、日本−インド間交流の架け橋として活躍してくれると期待しています。

活動レポート写真4
意見交換会終了後の一枚。非常に充実した学びの場となりました。