2022年度 活動レポート 第103号:森林研究・整備機構

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第103号 (Aコース)

モンゴルの学生が日本の林木育種および林木遺伝資源保全に関する技術を体験

森林研究・整備機構 林木育種センター海外協力課からの報告

 科学技術振興機構(JST)が実施する「さくらサイエンスプログラム」を利用して、令和5年1月22日から28日にかけてモンゴル科学技術大学から主に森林を専攻する学生5名および引率教員1名の計6名を林木育種センターに迎え科学技術交流事業を実施しました。
 林木育種センターは、国内で遺伝的に優れた特性を持つ林業用樹木の優良品種の開発や遺伝資源の収集・保存および林木育種の海外協力に取り組む研究機関です。
 モンゴルは、森林面積が少なく(森林率9%)1)、各国からの支援により緑化活動が行われています。日本からは「ウランバートル市植林技術支援事業」(2013~2016年)といった緑化活動が行われています。しかしながら、植栽後に多くの木が乾燥と低温により枯れてしまうことが課題となっています2)
 このような背景から、モンゴルの学生に林木の育種および林木遺伝資源管理の重要性への理解を深めてもらうことを目的に研修を実施しました。以下、活動の概要を紹介します。

活動レポート写真1
プログラム終了後の記念写真

 研修初日、オリエンテーションと林木育種センター内の施設見学をしました。施設見学では、参加者は担当者に温室の自動灌水方法等について質問を行うなど、大変興味深く話を聞いていました。また、午後からは遺伝資源管理および海外協力の取り組みについて講義を行いました。

 2日目は、参加者によるプレゼンテーションと意見交換を行いました。発表の内容は参加者がモンゴルの文化、所属大学、植生、研究内容等について分担し、衛星写真などの資料を使用して紹介が行われました。モンゴルの民族衣装であるデールを着てプレゼンテーションを行う参加者もいました。育種センター側からは、意見交換においてモンゴルの森林造成のための国家的取り組みである「10億本の木」について質問し、様々な情報が得られました。午後からは、モンゴルにおける主要な林業樹種であるカラマツについて、日本産カラマツを含む品種改良と種苗の安定供給の取り組みについて講義を行いました。

 3日目には、カラマツのつぎ木実習を行いました。参加者の中にはモンゴルでつぎ木を行っている者もおり、日本で習った技術を試してみたいといった声が聞かれました。午後には、モンゴルでは行われていない樹木のDNAマーカーを用いた系統識別の実習を行いました。参加者はピペット操作が思うように出来ないながらも慎重に実習に取り組んでいました。

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つぎ木実習の様子
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系統識別の実習を行っている様子

 4日目は、樹木の木材としての強さや密度などの材質評価について講義・実習を行いました。実習では樹木を伐採せずに強度を推定するピロディン、ファコップといった測定器具を用いて1本1本樹木の材質を測定しました

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材質調査

 午後には、当センターが行っている日本産広葉樹キハダの産地試験の一環として樹木の成長を評価する方法について講義・実習を行いました。構内の試験地にある北海道と九州の産地が異なるキハダ苗木の樹高、直径を調査し、産地の違いによる成長量の差を検討しました。

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成長量調査

 研修最終日には、参加者各自が研修を通じて理解したことをテーマに発表を行いました。DNA実習や材質調査など、研修で学んだことに加え、それらを自分の周りの人に伝えたい、モンゴルにある樹木のDNA分析を行いたいといった感想やモンゴルで林木の品種改良を行うための技術を教えて欲しいといった要望をもらいました。午後には、日本の林業の現状について知ってもらうため、茨城森林管理署の協力を得て、常陸太田市内の国有林において林業用に特化した重機を活用した立木の伐採、選別、運搬の様子を見学しました。参加者からはモンゴルでも林業の機械化を進めたいといった感想が寄せられました。

 移動も含めて7日間という限られた期間でしたが、参加者にとっては充実した体験実習となったようでした。また、受け入れる側にとっても、モンゴルの森林の現状を知る貴重な機会となりました。今後も両者の人的・技術的交流を深め、協力関係を築いていくことができればと考えています。
 本プログラムを実施するにあたっては、所内職員各位の協力を得ました。また、有意義な国際交流の機会をいただきました科学技術振興機構の「さくらサイエンスプログラム」に心から感謝申し上げます。


引用文献
1) FAO Global Forest Resource Assessenent 2020.https://www.fao.org/forest−resources−assessment/2020/en/、(2023年2月17日閲覧)
2) 穂積玲子(2019)モンゴルの森林と林業—モンゴルの代表的な林業現場を訪問して—[海外の森林と林業No.105、3–8]