2022年度 活動レポート 第99号:九州大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第099号 (Cコース)

アジアにおける国際遠隔医療推進のための技術研修プログラム

九州大学病院国際医療部アジア遠隔医療開発センターからの報告

 九州大学病院国際医療部アジア遠隔医療開発センターでは2023年2月1日から9日に「アジアにおける国際遠隔医療推進のための技術研修プログラム」というテーマで科学技術交流事業を実施した。遠隔会議をはじめとしたICT技術はCOVID−19感染拡大に伴い社会に広く浸透したが、依然として遠隔医療へのIT技術者による支援は欠かすことができない。そこで今回、国際間での遠隔医療活動の促進を目的とし、インド、インドネシア、ネパール、ブータン、ベトナム、マレーシアの6カ国より、大学病院など各国の中核を担う医療施設のIT技術者9名を九州大学病院に招へいした。

・ハイブリッド会議の実践

 個人で参加するのと異なり、大きな会議室や講堂を遠隔会議に接続する場合、適切な機材を手配し組み合わせる必要がある。このようなハイブリッド形式の会議は医療施設のIT技術者に求められる実践的なスキルであるため、その実現方法についての研修を実施した。招へい者達は九州大学病院にある会議室で、アジア遠隔医療開発センターのスタッフの指導のもとで実際に機材を組み、遠隔地とのコミュニケーションのテストを行った。

・広島大学の訪問・文化研修

 広島大学の新福洋子教授を訪問し、海外との遠隔医療教育に関する活動紹介を聴講した。新福教授はタンザニアの助産師の遠隔教育プログラムを実施した経験があり、今回はその活動を中心とした遠隔医療の実績について紹介いただいた。招へい者たちは医療教育や地方への医療の提供において地理的な課題がある国が多く、講義では非常に多くの質問やコメントを寄せていた。
 また日本の文化研修として、日本の代表的な宗教建築のひとつでもある厳島神社や、原爆ドームや広島平和記念資料館といった核兵器の痕跡を訪問した。

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広島大学での新福洋子教授による講義

・内視鏡ライブデモンストレーション

 九州大学病院の内視鏡室から内視鏡映像を遠隔会議やライブストリーミングシステムと接続し、医師による手技をリアルタイムかつ高品質で配信する実演を行った。さらに遠隔医療に応用可能な技術として全天球カメラとVRゴーグルをこの内視鏡ライブデモンストレーションに組み込み、より臨場感を高めた配信を試みた。このVRゴーグルによる内視鏡ライブデモンストレーションでは招へい者のみならず、九州大学病院の医師も一緒になって体験した。

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内視鏡ライブデモンストレーションの様子

・インドネシアとの神経内科カンファレンス

 九州大学病院の脳神経内科はインドネシア大学の留学生との帰国後の継続的な教育のため、2017年から遠隔会議を使った症例検討会を行っている。今回の交流事業ではこの遠隔会議の技術支援を行っているインドネシア大学のIT技術者を招へいしていたため、実践的な遠隔医療教育活動の紹介として、他の招へい者向けに実際の遠隔会議開催を通じた技術支援を実演してもらった。

・研修報告会

 研修の最後には遠隔会議による報告会を催した。招へい者たちは1週間の研修内容に加え、遠隔参加の参加者たちも含めて今後の継続的な遠隔医療の可能性について議論した。遠隔からの参加者には招へい者たちの上司や同僚のみならず、彼らの国の遠隔医療に携わる他の組織の関係者も見られた。なお遠隔会議は本交流計画で行ったハイブリッド会議の実践をもとに自ら会議室を設営した。研修会後、修了証の授与式を行った。

 今回の招へい者たちは遠隔医療の支援も行うIT技術者であり、彼らとの遠隔会議を通じたコミュニケーションは難しくない。しかし直接会うことでできる研修や交流は大きな価値を持っている。今回、さくらサイエンスプログラムの支援によって様々な国から技術者を呼び、多くのことを議論し、交流を深めることができた。この機会を活かし、日本を中心とした国際遠隔医療ネットワークを一層発展させていきたい。

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修了証授与後の集合写真