2022年度 活動レポート 第96号:広島大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第096号 (Aコース)

生体材料学に関する科学技術体験

広島大学大学院医系科学研究科
教授 加藤 功一さんからの報告

 2022年11月12日から19日までの8日間、2022年度JSTさくらサイエンス招へいプログラム「生体材料学に関する科学技術体験」(Aコース)を広島大学大学院医系科学研究科において実施しました。インド中央機械工学研究所(Council of Scientific and Industrial Research, Central Mechanical Engineering Research Institute;博士課程大学院生3名、引率教員1名)およびインド国立化学研究所(Council of Scientific and Industrial Research, National Chemical Laboratory;博士課程大学院生3名、引率教員1名)から8名の研究者を招へいし、わが国における多様な科学技術に触れる機会を提供しました。

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広島大学大学院医系科学研究科に招へいした8名のインド人研究者と生体材料学研究室員との集合写真

 私たちの研究グループと本プログラムで招へいした2つの研究グループは、互いに異なる学問的興味およびバックグラウンドを有しながら、医療技術の発展を通して持続可能社会の構築に寄与したいとする教育研究上の目標を掲げています。そこで、本プログラムではまず、互いの組織のミッションを共有するとともに、私たちの研究グループで進行中の最先端生体材料学研究を紹介しました。とりわけ、生体材料の3次元ミクロ造形技術、ナノマテリアル表面設計技術、遺伝子工学を基盤とするグリーンポリマー製造技術に関連した内容に焦点を当てました。

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生体材料学研究室でプロテインポリマーの作製工程について説明を受ける招へい者

 また、実施主担当者の加藤が併任する広島大学ナノデバイス研究所に出向き、同研究所に整備されている半導体製作用のクリーンルームを見学しました。半導体微細加工技術は、医療用ナノ材料やナノデバイスの作製にとって効果的で重要な役割を果たすことから、招へい者らの研究展開に新たな可能性を生み出すと期待します。

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広島大学ナノデバイス研究所にてクリーンルームの見学

 以上の活動を通して招へい研究者らは生体材料に関する多様な技術について視野を広げるとともに、相互の研究討論を通して今後の国際的共同研究の可能性について具体的なイメージを持つことができるようになったと思います。

 さらに、招へい者らに我が国の最先端科学技術とその社会実装の現場を肌で感じてもらうため、歯科材料メーカー(株式会社松風、京都市)および自動車メーカー(マツダ株式会社マツダミュージアム、広島市)を見学する機会を設けました。わが国が誇る技術開発力や製造技術の一端に触れることで、基礎研究から社会実装に至る産業界の全容について理解が進むと考えました。招へい者らの所属する研究機関は、科学技術の社会実装を通して産業振興に資することをミッションとすることから、経験の浅い若手研究者らが、グローバルな視点で基礎研究と産業技術・ビジネスとの連関を体験することの意義は大きいと考えます。

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マツダミュージアムにて自動車製造技術の開発について学習

 以上の科学技術体験に加えて本プログラムでは、広島市において広島平和記念資料館の見学、宮島・厳島神社の参拝、お好み焼き体験をするとともに、京都市では金閣寺および清水寺を拝観するなど、わが国の文化について理解を深めてもらうためのエクスカーションも企画しました。

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原爆ドーム及び広島平和記念資料館の見学

 本プログラムを通して、日本とインドにおける科学技術の進展や方向性について相互に理解が深まると同時に、招へい者らと受入研究室の研究上の興味には多くの共通点があることを再確認することができました。生体材料学の分野で学位取得を目指している招へい大学院生の一人は、本プロフラムで得た知識をもとに、学位取得後にポスドクとして私たちのグループで研究を行いたいと思うようになったそうです。また、本プログラムの実施には、私たちの研究室に所属する大学院生にも協力を仰ぎました。それらの大学院生は、招へい研究者らとの交流を通して、よい刺激を受け、海外における研究に目を向けるきっかけを得たようです。