2022年度 活動レポート 第82号:九州工業大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第082号 (Bコース)

環境問題解決のための異分野融合によるナノバイオセンサに関するマレーシアプトラ大学とマレーシア科学大学との共同研究活動

九州工業大学大学院生命体工学研究科
准教授 池野 慎也さんからの報告

 令和4年11月25日から12月15日までの3週間、交流協定校であるマレーシアプトラ大学から大学院生2名と引率教員1名、同じくマレーシアサインズ大学から大学院生2名と引率教員1名、合計6名を招へいして国際共同研究活動を実施しました。マレーシアでは化学プラント市場が中長期的に高度成長を続けて拡大しており、自動車の普及増大も重なって浮遊粒子状物質や光化学オキシダントに係る大気汚染の状況は深刻です。また水環境中においては、生態系に著しく影響を及ぼす環境ホルモン、生物分解されない工業排水中の重金属類や海上輸送量の増大により船底防汚塗料(亜酸化銅)による船舶を発生源とする海洋環境汚染が問題になっています。これら、環境問題を解決するためには、先進国が持つ優れた先端科学技術や英知を開発途上国での環境問題解決に活用し、経済発展以上に研究開発力の向上を加速化していく必要があるため、ナノバイオセンサに関する共同研究活動に取り組みました。

 来日前にオンラインミーティングで、自己紹介、渡航に関する注意点、日本での生活や研究活動における注意点に関するオリエンテーションを実施し、来日後の活動の準備をしました。11月25日に来日し、キックオフプレゼンテーションおよび滞在中の共同研究内容について打ち合わせを行いました。週明けの月曜日は、午前中に本研究に関わる最終確認も含めたミーティングを実施し、午後は本学工学部の応用化学科のいくつかの研究室を訪問し、材料・生体に関連した研究分野を通じて社会的諸問題の解決をめざした研究活動を見学しました。翌日(来日5日目)から、センサのための生体分子を作る技術(合成チーム、発現チーム)、ターゲットを検出するための生体分子素子を創る技術(設計チーム、構築チーム)の4つのチームに分かれて、本学の大学院生と一緒に共同研究を実施しました。

活動レポート写真1
実験の様子
活動レポート写真2
実験結果について討論中

 15日目は、理化学研究所播磨地区にある放射光科学研究センターを訪問しました。放射光科学研究センターは世界最高性能の放射光を発生することができる大型放射光施設SPring−8とX線自由電子レーザー施設SACLAの研究開発を進めています。今回の訪問では、これら最先端の科学技術施設および装置を見学し、世界をリードする日本の科学技術の理解と関心を深め、学術的な知見を成熟することができました。マレーシアにはこのような大型施設はなく、物質の性質を原子・分子レベル解析するためには日本をはじめとした先進国で解析しなければならないため、非常に興味を持って参加していただけました。

活動レポート写真3
SPring−8職員の方による装置(二結晶分光器)の説明(活動15日目)
活動レポート写真4
SPring−8訪問(SACLA)(活動15日目)

 共同研究の最終日には、各グループの成果と今後の展望についてのプレゼンテーションを行ない、大学院生および教員も含めてディスカッションを実施しました。このディスカッションでは、新たな目的や展望が挙げられるなどとても充実した共同研究活動であったと思います。3週間という短い期間での共同研究では、想定外の失敗や予定通り進まなかったチームもありました。しかし、当初の目的である、「他分野・異国間との研究交流を通じて環境問題解決のための分野を超えた新しい融合研究を形成する」ことは達成できたのではと思います。また、研究室の日本人大学院生にとっては、研究の取り組み方や考え方の相違を身近に感じることでグローバルな感性を身につけていただけたと思います。このプログラムで招へいした院生・教員からは、多くの感謝の言葉を頂きました。
 最後に、このような機会を与えていただいた科学技術振興機構、ご協力いただきました放射光科学研究センターの職員の皆様、本学の教員・学生・事務の皆様に心からお礼を申し上げます。