2022年度 活動レポート 第75号:産業技術総合研究所

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第075号 (Bコース)

モンゴルと日本における地質情報・自然災害・資源・地質試料分析に関する共同研究の展開

産業技術総合研究所からの報告

 本プログラムでは、送出し研究機関(モンゴル鉱物・重工業省/モンゴル地質調査所)との今後の共同研究に向けた予備的研究を進めるとともに、受入れ研究機関(産業技術総合研究所)および連携する研究機関との長期的な幅広い研究協力の展開を目的として若手研究者を招へいした。

<1月18日>

 産総研サイエンススクエアを訪問し、ギネス認定のアザラシ型セラピーロボット「パロ」やプランク定数の精密測定とキログラムの新定義に貢献したシリコン単結晶球体などの展示を見学した。また、地質標本館を森田標本館長による説明を受けながら見学し、日本の火山・活断層などの分布と人間生活への影響や日本の地質・化石・鉱物について理解を深めた。

活動レポート写真1
地質標本館で森田標本館長(左端)の説明を受ける参加者。
日本の立体模型にプロジェクションマッピングで地形と活断層が表示されている。

<1月19日>

 筑波山と富士山の地質図を渡すと共に、国際ジオパークの審査も務める渡辺博士からジオパークについての講義を受け、筑波山地域ジオパークの巡検を行い、花崗岩や変成岩と周辺地形の観察を行った。

<1月20日>

 房総半島千葉セクション露頭にて、新しい地質年代「チバニアン」の国際標準模式層断面及び地点(GSSP)と認定された露頭とビジターセンターで茨城大学岡田誠教授による説明を受けた。

活動レポート写真2
市原市の千葉セクション前にて。左端が岡田教授。左のパネルは
国際標準模式層断面及び地点(GSSP)を示すゴールデンスパイク。

<1月22日>

 国立科学博物館つくば実験植物園を訪問し、日本と世界の蘭の圧倒的な多様性に魅了された。また、JAXA筑波宇宙センターのガイド付き見学ツアーに参加し、日本の「きぼう」船外実験プラットフォームの運用中のコントロールルームなどの見学を行い、日本の宇宙開発技術について理解を深めた。

<1月23日〜24日>

 高知大学の長谷川精博士と穴井千里博士の案内で室戸ジオパークとビジターセンターを見学し、海洋プレートが日本列島に衝突して形成された付加体堆積物や海底で噴出した枕状溶岩、それらが渾然一体となったメランジュ構造などの観察を行った。

<1月25日>

 高知大学海洋コア総合センターを訪問し、共同利用施設の実験装置について高知大学山本裕二教授から説明を受けた。また、掘削船「ちきゅう」と国際深海科学掘削計画(IODP)の説明を受け、掘削コア試料保管庫の見学を行った。

<1月26日>

 産総研が開発した走査型SQUID顕微鏡による地質試料分析を行った。また、受入れ研究機関のデジタル地質図・地震・リモートセンシング・鉱物資源・地中熱の専門家から研究活動の紹介をするとともに、送出し研究機関の鉱物資源の研究開発について紹介をいただき、意見交換を行った。モンゴルの地震活動・地中熱利用などの知見を得ることもできて有意義であった。また、デジタル地質図やリモートセンシングについて、今後のモンゴル側での研究開発やデータの利活用が期待される。

活動レポート写真3
受入機関の研究紹介・意見交換会での記念撮影。
デジタル地質図・地震・リモセン・鉱床・地中熱の専門家と。

<1月27日>

 東京大学大気海洋研究所を訪問し、東京大学の横山祐典教授と宮入博士の案内で炭素14年代測定のための加速器質量分析装置などの見学を行った。また、国立科学博物館上野本館を訪問し、特別展「毒」および常設展を見学し、当博物館の企画力と膨大な保有コレクション、および日本の自然と歴史について理解を深めた。さらに、東京大学本郷キャンパス理学部1号館のサイエンスギャラリーを訪問し、真鍋博士・梶田博士・小柴博士のノーベル賞展示を見学した。

活動レポート写真4
東京大学大気海洋研究所の炭素14年代測定分析装置見学。
右端から、案内いただいた横山教授、宮入博士。

<1月28日>

 つくば市花室川ナウマン象発見地点を見学し、地質標本館展示のナウマン象化石の理解を深めた。また、上高津貝塚ふるさと歴史の広場考古資料館の展示、および貝塚と竪穴式住居の屋外復元展示を見学し、縄文時代には海であった貝塚近くの霞ヶ浦の景観を満喫いただいた。

<1月30日>

 産総研地質調査総合センターにおける共同利用実験室(GSJ−Lab)および鉱物資源グループの分析装置を見学いただいた。また、産総研地質調査総合センターの図書室と地質図アーカイブ室を訪問し、モンゴルの文献・地質図をはじめとする世界各国の資料を堪能した。さらに、今後の研究交流について意見交換してプログラムは終了した。モンゴルには過去に海で形成された地層が存在するが、高知で海を経験したことは深く印象に残ったようである。