2022年度 活動レポート 第69号:関西学院大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第069号 (Aコース)

持続可能社会のための物質設計・評価の体感:インド・台湾の学生を招へい

関西学院大学からの報告

 2022年10月20日から26日の7日間、さくらサイエンスプログラムにより、インドのアミティ大学ノイダ校とビヤニガールズカレッジ、台湾の国立台湾師範大学と東海大学から学生15名、引率者3名の総勢18名を招へいし、関西学院大学 工学部・理学部の教育研究の体験と、連携大学院であるSPring−8研究施設の見学・体験学習を実施しました。

 今回のプログラムは、「持続可能社会のための物質設計・評価の体感 ~理論と実験の協奏~」と題して、グローバルな課題であるカーボンニュートラルの実現を目指す研究を通じて、科学技術の側面から貢献できる人材育成に取り組むという共通の意識を持った、インド・台湾・日本の5つの大学間交流です。

 特にこのプログラムを通じて、学生同士の交流が継続的に発展していくことを願って、本学からは同世代の学部4年生、大学院の修士学生が中心となって実験や見学会のサポートをしました。また、国際交流が深まることを狙って、インド・台湾からの参加学生15名を国や大学の枠を超えた3グループに分け、それぞれのグループが最終日に成果発表をすることを企画しました。研究実習時間だけでなく、予習復習時間においても、活発な意見交換の様子が見られました。

<10月20日>

 来日初日は、滞在中のスケジュールと注意事項のアナウンスを行い、2日目からの本格的なプログラムに備えました。

<10月21日>

 2日目の午前は、歓迎セレモニーとして理学部の高橋功学部長の歓迎の挨拶の後、プログラム説明、オリエンテーションに続き、インド・台湾からの参加学生15名によるスライド1枚だけの自己紹介、そしてそれぞれの大学ならびにお国自慢を披露してもらいました。いずれもがよく工夫された楽しいプレゼンテーションであり、参加学生たちのパワーに圧倒され、緊張もどこかに飛んでしまうくらい、打ち解けた雰囲気に包まれました。

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自己紹介も楽しくセンス抜群(氏名は消しています)

 セレモニーに続いて、工学部・物質工学課程の田中裕久教授による燃料電池技術の現在とその目指す姿についての講義がありました。燃料電池がカーボンニュートラルを実現する新しいエネルギーとして広く普及するために、燃料の多様性と希少資源依存からの脱却が重要であることを共有しました。続いて世界に1台しかない貴金属フリー・ダイレクトヒドラジン燃料電池車「FC商CASE」に、実際に見て触れることができました。そして、いよいよ燃料電池実験が始まりました。田中研究室の学生から、実験の狙いと方法について説明があり、実セルを使った発電実験に取り組みました。インドと台湾の学生たちは興味津々で、質問や熱い議論が絶えることなく、田中研究室の学生たちは汗を拭きつつ英語で応戦しました。

 続いて、工学部・物質工学課程の小倉鉄平教授による燃料電池の計算機シミュレーション実習へと移りました。燃料として水素とヒドラジンの分子構造をコンピュータ上で作成し、量子化学計算により分子軌道や状態密度のデータを取得することで、物性を理論的に予測するプロセスを学びました。燃料電池の理論と実験の両方を体験した、とても盛りだくさんでハードな1日となりました。

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燃料電池発電実験。質問の嵐にタジタジ

<10月22日>

 3日目はSPring−8の見学です。本学着任前SPring−8に在職し、持続可能なエネルギー社会実現を目指し本学に異動した工学部の藤原明比古教授が引率しました。連携大学院の松村大樹客員教授(日本原子力研究開発機構発機構・主任研究員)の参加を得て、大型放射光施設SPring−8やX線自由電子レーザーSACLAの施設の特徴や施設がどのような研究に使われているかの説明をしました。その後、施設で使われている装置・機器の展示物で電子の加速や放射光の発生について理解を深めました。

 午後は、一般見学では立ち入ることの出来ない実験ホールへ。世界最高性能の分析ツールが巨大なーホール内に並んでおり、まさに日本の最先端技術に触れる機会となりました。本学の理工学研究科が使用しているビームラインや台湾が使用しているビームライン、また、そこで行われている研究内容について学びました。大型の施設に圧倒されつつも、施設の運転の原理やSPring−8でしかできない測定について学びました。

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日本の誇る大型放射光施設SPring−8の見学

<10月23日>

 来日から3日間、土曜日までみっちりと講義、実験、施設見学を行ってきた学生さんは、4日目の日曜日を利用して、本学教員1名と学部4年生4名と共に、貸切バスにて京都を訪れました。歴史の長いインドと台湾の学生さんに何を見ていただくか悩みましたが、訪問先は「The 日本」ともいうべき、伏見稲荷大社と清水寺に決めました。事前の天気予報とは裏腹に好天に恵まれ、温かい日差しのもと、日本の伝統・文化を堪能しました。お昼は日本食、夜はインド料理を、お料理の名前や調理法などを教え合いながら楽しくいただきました。文化や自然に触れながらの交流は大盛り上がりでした。みんなの笑顔が印象的ですね。

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清水の舞台。笑顔が素敵すぎる!

<10月24日>

 5日目は理学部・化学科の重藤真介教授による太陽電池材料の顕微分光分析の講義と実験です。午前中は分子や結晶の構造を鋭敏に反映する顕微ラマン分光法の原理について学びました。午後には太陽電池材料として注目されている、有機無機ハイブリッドペロブスカイト半導体薄膜を作製して、実際に顕微ラマン分光測定によりその基礎物性を評価する手法を体験しました。ここでもまた、多くの質問や活発な意見交換が見られました。重藤研究室の学生たちにとっても貴重な経験となったと思います。

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顕微ラマン分光にて基礎物性を評価

<10月25日>

 6日目の午前は、本学国際教育・研究センター職員が、海外からの学生へ提供するプログラム、特に、国際修士プログラムや大学のサポートについて説明した後、さくらサイエンスプランの体験を機会に関西学院大学の博士前期・後期課程に進学した留学生が、体験談やキャンパスライフについて説明しました。招へい者からは、留学を想定した活発な質問がありました。

 また理学部・物理学科の松浦周二教授により、本学・神戸三田キャンパスに新しく設置された天体望遠鏡の見学会が催されました。持続可能な地球、さらには果てしない宇宙にまで、みんなのイマジネーションは膨らんでいきました。

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見上げてごらん、夜の星を!(昼間でしたが)

 午後は、本プログラムの集大成として、今回のプログラムで学んだことを3チームにわかれて報告しました。3チームそれぞれが国と大学の混成メンバーからなり、個性的な発表をしました。専門的な質疑応答も活発に行われ、短い期間での体験を今後どのように生かすかという将来展望にも触れた頼もしい発表もありました。参加者全員がプログラムを無事修了し、修了式にて、高橋功理学部長より、修了証書が授与されました。

<10月26日>

 参加者全員が元気よく無事に帰国しました。今回参加いただいたインドのアミティ大学ノイダ校とビヤニガールズカレッジ、台湾の国立台湾師範大学と東海大学、そして関西学院大学の学生たちが、これからも交流を継続してくれたら嬉しく思います。そして、近い将来、今回の訪問メンバーの中から関西学院大学へ留学する学生さんが現れることを願っています。

 最後になりましたが、本プログラムの実施に際して、多くのみなさまにお力添えを頂きました。この場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。