2022年度 活動レポート 第65号:大阪大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第065号 (Aコース)

福島県浜通り地域で学ぶ、環境放射線の測定技術と社会的影響

大阪大学からの報告

 大阪大学放射線科学基盤機構は、令和4年9月18日~9月24日にベトナム・マレーシア・インドネシアからの合計11名(教員1名、大学院生1名、学部生9名)を迎え、「浜通り環境放射線研修プログラム」と題した科学技術体験実習コースを実施しました。

 本プログラムでは、福島県浜通り地域(大熊町と飯舘村)において、環境放射線の測定技術を学ぶとともに、その社会的影響について理解を深めることを目的としました。放射線計測をただ単にマニュアルに従って行うのではなく、その背景にある物理現象や社会的な影響について広く考えることのできる機会とすることを目指して実施しました。

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環境放射線の測定実習。NaI(Tl)検出器を用いて測定

 本プログラムは大阪大学が行なっている「福島県浜通り地区環境放射線研修会」と共同で実施しました。共同で行うことにより、招へいした学生たちと日本人学生が一緒に研修を受けることができ、双方の学生にとって大きな相乗効果を得ることができました。これまで行なってきた招へいプログラムでは、学生間の交流が歓迎会や見学に限られていましたが、本プログラムでは合同で研修を行うことで密度の高い交流を実現することができました。参加した日本人一般学生や取りまとめをするリーダー学生も英語で交流することで、大いに国際的な素養を培うことができました。また、大阪大学に既に在学している留学生も一緒に研修を行っており、日本への留学がより有意義なものとなったと期待しています。

 招へいする学生は、送出し機関のスクリーニングあるいは書類選考で人数を絞った上でZOOMを使ったオンライン面接を通じて選考しました。マラヤ大学では80人を超える応募者があり、その中から9人を選んで面接を行うという大変難しい選考になりました。全体で、34名を面接し、その中から10名を選考し招へいしました。

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飯館班集合写真(日本人学生と共に)

 研修会に参加する学生には、最初にインターネット上でアクセスできるようにした教材を使って、環境放射線、空間線量測定の原理と方法、サンプル採集と測定、ならびに福島の復興に向けての取り組みなどについての一連の講義内容を自習してもらいました。9月7日には、オンライン(リアルタイム)で研修に関するオリエンテーションを行い、研修プログラムの概要・注意事項を説明し、日本の新型コロナウィルス感染症に関する水際対策など、来日ならびに入国に必要な手続きの確認をしました。水際対策が大きく変更されていた時期であったため、リアルタイムでの説明が大変有効でした。

 9月18日朝、成田空港で招へい学生を出迎えた後、バスで福島に向かい、日本の学生と合流しました。
 研修会では、6〜8人のグループに分かれて実習や議論等の活動を行っており、招へいした学生は、2名程度ずつ各グループに分かれて参加しました。実習は、福島県浜通り地域において、空間線量の測定や、許可を得ている山林などで土壌や植物等の測定用サンプル採取を行いました。各グループにはこれまでの研修に参加した学生が学生リーダーとして様々な研修補助にあたりました。

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土壌試料の採取

 研修では福島第一原子力発電所・中間貯蔵施設の見学も行いました。写真で見ることでは得られない原発事故やその後の復興への取り組みを実感したり、そこで働く人たちの姿を見たりすることができました。放射線と社会との関わりを知る上で、浜通り地域の住民の方との交流プログラムは非常に重要です。本プログラムでは、地元の協力を得て、そこで生活をしている方との対話や、農家の訪問を行いました。そして、原発事故直後の三春町町長の行政判断に至るまでの苦悩や、事故後の農業復興に携わるファーム社長の奮闘を直接聞くことで、海外までは伝わっていない福島の生の様子を正しく知ることができました。本プログラムを通じて、招へいした学生に福島の復興への取り組みを正しく知ってもらえたと考えています。

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福島第一原子力発電所の見学
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大熊町で復興に携わる方から現場の話を伺う。

 研修の終わりでは、グループごとに、測定についてのまとめと研修で学んだことを発表する機会をもうけました。発表するためにグループで議論を行い、まとめることは、研修内容に対する理解をより深める上で重要であり、実際に高い効果を得ています。

 あいにく台風14号が接近していたため、安全確保のため野外でのサンプル採取の予定を急遽変更するなどの対応を行いました。その中で、半数のグループが福島第一原子力発電所の見学ができなくなってしまったことは残念でした。

 9月23日に福島での研修を修了し、招へい学生は、成田に向かい、1泊して翌朝早く帰国の途につきました。コロナ禍で様々な制約がありましたが、無事に研修を実施することができました。日本人学生の中での研修を体験することで、双方にとって大きな効果が得られたと考えます。今後、新型コロナウィルス感染症に関する制約がなくなることで、より密度の高い国際交流としていけるのではないかと考えます。