2022年度 活動レポート 第64号:豊橋技術科学大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第064号 (Bコース)

高精度分子シミュレーションに基づく創薬に関する共同研究

豊橋技術科学大学 情報・知能工学系 
准教授 栗田 典之さんからの報告

 2022年12月11日から12月26日の16日間、本学と交流協定を結んでいるタイのウボンラチャタニー大学のPungpo Pornpan准教授、および研究室の学生4名を受け入れ、招へいプログラムを実施しました。このプログラムは、昨年度も実施しましたが、コロナウイルス感染症の影響のため、オンラインでの実施になりました。そのため、今回のプログラムに参加する学生は、実際に来日して日本での生活と研究活動を体験することを楽しみにしていました。今回の体験は、学生にとってとても有意義なものになったと思います。

 今回の招へいの主な目的は、これまでPornpan准教授と進めてきた共同研究「高精度分子シミュレーションに基づく創薬」を加速し、新たな治療薬を提案する研究プロセスを確立することです。そのため、短い滞在期間中に、参加学生と受入れ研究者の研究室の学生が一緒になって、様々な分子シミュレーション手法を体験し、今後の共同研究に役立つ体験をしました。

 今回の受入れにより、さくら招へいプログラムのみではなく、今後、JASSOの海外特別研究学生の受入れにつながる研究成果を上げることが出来ました。また、2023年1、2月に、受入れ研究室の日本人学生が、先方の先生の研究室で海外実務訓練を行う予定であり、その準備もすることが出来、お互いの研究室の学生が相互に交流することを加速することが出来ました。今後も学生の交流を活性化し、国際共同研究を加速し、その成果を共著論文として、インパクトの高い国際学術専門誌に発表したいと考えています。今回の滞在中に、投稿中の共著論文が、Computers in Biology and Medicineに採択されたという連絡がありました。以下に、活動内容の詳細を示します。

<12月11日>

 早朝、参加者5名がバンコクより中部国際空港に到着し、豊橋駅に移動しホテルにチェックインしました。その日は休日であったため、豊橋市の市庁舎、公園などを見学し、豊橋市の歴史について情報を得ました。

活動レポート写真1
空港での迎え入れ時の様子

<12月12日~12月18日>

 参加者が各自の研究テーマについて紹介し、今回のプログラムでどこまで計算したいかを明確にしました。その後、受け入れ研究室の学生が研究紹介し、研究室で実行可能な分子シミュレーション手法について詳しく紹介しました。

 その後、各参加者が研究する対象のタンパク質に対して、実際に分子シミュレーションを開始しました。まず、最初にタンパク質の構造を作成し、そこに薬の候補となる低分子をドッキングし、タンパク質と低分子の複合体の候補構造を多数作成し、既存の低分子に対する実験構造と比較し、適切な候補構造を幾つか作成しました。

活動レポート写真2
研究室での日本人学生らとの様子

<12月19日>

 本学の学長を表敬訪問し、今後の学生交流および研究交流について、意見交換しました。また、本学のエレクトロニクス先端融合研究所のLSI工場、人間・ロボット共生リサーチセンター、グローバルハウスを見学し、本学で進められている先端研究についての情報を得ました。

活動レポート写真3
学長との面談の様子

<12月20日~12月25日>

 まず、各参加者が作成した候補構造に対し、より現実的な構造を得るために、分子力場計算を実行し、複合体の安定構造を得ました。次に、その構造に対し、フラグメント分子軌道計算を実行し、タンパク質と低分子間の特異的結合状態を高精度に解析しました。この計算を研究室の並列計算機で実行しましたが、結果を得るには、少なくとも数日必要であり、今回のプログラム期間内には、纏まった結果を得ることは出来ませんでした。2023年2月に、同じ研究室の2名の大学院学生が、JASSOの海外特別研究学生として3ヶ月間滞在する予定であり、今回の研究成果を引き継いで共同研究を行う予定です。

<12月26日>

 参加者は各自の研究成果を持って、中部国際空港より帰国の途に就きました。今後、参加者の内の何名かの学生が、本学を再訪問し共同研究を行う予定であり、今回のプログラムにより共同研究を加速することが出来ました。実際に会って、対面で議論することの重要性を実感しました。

活動レポート写真4
空港での帰国前の様子