2022年度 活動レポート 第61号:北九州市立大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第061号 (Cコース)

日本の資源循環サイエンス—低炭素コンクリートづくりの科学学習プログラム

北九州市立大学国際環境工学部
教授 高巣 幸二さんからの報告

 マレーシアのトゥンクアブドゥルラーマン大学から11名、中国の青島理工大学から6名、計15名の学生と引率教員2名が10日間の「C.科学技術研修コース」活動を行った。

 震災により発生した大量の震災がれきや原子力発電の停止による火力発電の需要の高まりから生じる膨大なフライアッシュの処理が今後重要課題となっている。当研究室ではこれらの材料を使用するための技術開発を行っており、その成果を同様な問題を抱えているアジアの将来有望な学生に伝え、わが国の新しい環境理念・科学を世界に広げていきたいと考えている。

 来日後、ガイダンス、参加者自己紹介、科学技術研修コースの説明に続いて、学部の歓迎会を開催した。

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歓迎会にて。全員の集合写真

 バイオマス発電の特徴は以下のとおりである。

  1. 地球温暖化対策:
    光合成によりCO2を吸収して成長するバイオマス資源を燃料とした発電は「京都議定書」における取扱上、CO2を排出しないものとされている。
  2. 循環型社会を構築:
    未活用の廃棄物を燃料とするバイオマス発電は、廃棄物の再利用や減少につながり、循環型社会構築に大きく寄与する。
  3. 農山漁村の活性化:
    家畜排泄物、稲ワラ、林地残材など、国内の農産漁村に存在するバイオマス資源を利活用することにより、農産漁村の自然循環環境機能を維持増進し、その持続的発展を図ることが可能となる。
  4. 地域環境の改善:
    家畜排泄物や生ゴミなど、捨てていたものを資源として活用することで、地域環境の改善に貢献できる。

 宮崎森林発電所では国を先導してこのような先進的な事業を行っているため、招へい学生と一緒に調査をし、環境に貢献する日本の先進的な取り組みを勉強し、さらに、木質バイオマス発電後のフライアッシュを利用して、低炭素なコンクリート製造の可能性について、ワークショップを実施した。

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森林発電所の授業やワークショップ
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プラント工場の視察

 講義では、環境負荷低減および再生建材有効利用の科学技術を学び、ライフサイクルアセスメントの理論、低炭素コンクリートを実現するためのフライアッシュの品質改善手法、再生建材リサイクルのプロセス、再生建材低炭素コンクリートの分析手法について理解を深めた。

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講義の風景

 また、町や神社等を見学し、日本の伝統文化等も学ぶことができた。

 我が国ではコンクリートの生産に伴って膨大なCO2が排出されているが、コンクリートの原料にリサイクル材料であるフライアッシュを大量使用することにより、CO2排出量を大幅に減少させることができる。プログラムを通して、アジアの若手研究者に我が国の最先端の科学技術を理解してもらった。今後このような取り組みを継続し、アジアの新しいリサイクル産業および環境産業の振興に貢献していきたいと考えている。