2022年度 活動レポート 第60号:奈良先端科学技術大学院大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第060号 (Bコース)

タイ、インドネシアの学生がソフトウェアエコシステムにおける情報・コミュニケーション技術を学ぶ

奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科情報科学領域
教授 松本 健一さんからの報告

 さくらサイエンスプログラムにより、2023年1月9日~1月23日の15日間、タイ・マヒドン大学、インドネシア・ムハマディア大学スラカルタ校から、それぞれ学部学生3名と引率教員1名が来日し、奈良先端科学技術大学院大学における「研究インターンシップ」に参加した。

 同インターンシップは、参加学生が将来日本へ留学した際にも参画可能な国際共同研究の基盤を形成するものである。タイ・マヒドン大学と本学とは既に学術交流協定を締結しており、インターンシップ等の人的交流を推進してきている。一方、インドネシア・ムハマディア大学スラカルタ校との協定締結はこれからであるが、引率教員は本学の博士後期課程修了生であり、学位取得後、コロナウィルス感染拡大の影響を受けたこの2年間においても、共同研究を継続している。本学と両校それぞれとの教育研究連携を、三者間での継続的な連携・協力・交流へと発展させることが、本プログラムの主要な目的の一つである。

 研究インターンシップにおいて学生たちは、ソフトウェアエコシステムにおける情報・コミュニケーション技術に関する研究テーマに取り組んだ。来日期間は15日間と限られていたが、来日前の1ヶ月間、本学受入教員・学生とのオンライン交流を実施することで、研究テーマの背景や意義などへの理解を深め、本学での実習に備えてもらった。研究テーマには、プログラムコードの適格性(Competency)評価、ソフトウェア開発におけるChatGPTの活用など、ソフトウェア工学分野において今まさに高い関心を集めている技術的課題を含め、参加学生が帰国後も、そして、将来、日本へ留学することになったとしても継続して取り組めるよう配慮した。具体的には、本学情報科学領域ソフトウェア工学研究室が構築している「ソフトウェア開発運用履歴リポジトリ」を用いたデータ解析に取り組んでもらった。同リポジトリには、オープンソースソフトウェアの開発プロジェクトを中心に、約1,000万プロジェクトのデータが集積されている。参加学生は、データ解析を通じて、ソフトウェア開発の現状と課題を定量的に捉え、コード適格性評価やChatGPT活用などの実現に向けた技術的基盤を形成することができた。

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実習に取り組み議論を行う参加学生と引率教員、受入れ機関教員

 インターン実習のためのスペースとして、同研究室のミーティングルーム1室を準備し、本学キャンパス内のゲストハウスを、参加学生と引率教員の宿泊先として確保するなど、滞在期間中、参加学生が実習に集中できる環境を整えた。また、ムハマディア大学スラカルタ校の学生へのチューターには、イスラム圏からの留学生を配置し、食事その他において支障がないよう留意した。実習の最後には、実習の成果についての最終報告会を実施し、本学塩﨑一裕学長より修了証書を授与した。なお、参加学生に対しては、博士前期課程への2024年10月入学(留学)を念頭に、2023年11月に本学にて募集予定の「国費外国人留学生優先配置プログラム」への出願を強く促すこととしている。

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授与された修了証書を持つ参加学生。塩﨑一裕学長、受入教員、チューター学生などとともに

 受入れ機関である奈良先端科学技術大学院大学は、学部を持たない大学院大学である。学部生のインターン生としての受入れは、優秀な留学生の獲得と国際共同研究の継続性向上という両面で大変重要である。本プログラムを通じて、留学生を含む本学学生が優れた研究成果を挙げてきていること、そして、全学レベルで教育研究環境や手厚い留学生支援体制を本学が整えていることなどを、参加学生とその引率教員に直接示すことができた。学生としての日々の過ごし方や生活環境などを実感することも、留学への意欲を高め強い動機付けになったと考えている。本プログラムは、「情報・コミュニケーション」をキーワードとして、タイ・マヒドン大学、インドネシア・ムハマディア大学スラカルタ校、そして本学とを結び、東アジアに広がる頭脳循環ネットワークを形成し、科学技術イノベーションに貢献する人材の養成・確保に大きく資する取り組みでもあった。

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修了証書を手に喜び飛び跳ねる参加学生