2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第059号 (Cコース)
スポーツ工学に関するカセサート大学との人材育成交流プログラム
長岡技術科学大学 情報・経営システム系
准教授 大橋 智志さんからの報告
JSTさくらサイエンスプログラムにより、2022年10月17日~10月24日までの8日間、タイ国立カセサート大学工学部から招へい者11名(学生10名、教員1名)を受け入れ、スポーツ工学を通じた人材育成交流プログラムを実施した。本プログラムの目的は、理工学分野の知識と技術を活用し、スポーツに関係する実験とスポーツデータ分析の体験からヒューマンダイナミクスやスポーツ用具開発に関するイノベーションへの萌芽につなげるとともに、新潟県長岡市内のスポーツ施設やスポーツ用具製造現場へ訪問し、地域に密着したスポーツ産業やスポーツ文化への理解とその意義を学ぶこととした。
■日本科学未来館見学(10月17日)
羽田空港到着後は日本科学未来館へ訪問し、日本の科学技術に触れる体験を実施した。
■スポーツ工学に関する講義と実験(10月18日、19日、21日)
はじめに、長岡技術科学大学の紹介とともに報告者が所属するスポーツ工学・生理生体情報研究室の研究内容について説明した。我々の研究室では、長岡技術科学大学、地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター、株式会社オーエックスエンジニアリングの三機関によるバドミントン競技用車いすの開発に従事してきた経緯があり、東京2020パラリンピック競技大会では、開発した競技用車いすがバドミントン競技に採用され、金メダルと銅メダル獲得に寄与する成果を得ている。これらの経験から、開発した競技用車いすでの走行体験と計測実験も加えた、①スプリント計測、②ジャンプ計測、③車いす走行計測を研究室に所属する日本人学生らと協働して取り組んだ。その後、収集したスポーツデータの分析方法について講義し、カセサート大の学生自らPythonプログラミングによるデータ分析演習に取り組み、自身が被験者となったデータ群の分析にも取り組んだ。
■企業・施設見学(10月20日、23日)
はじめに長岡市内の企業であるヨネックス株式会社新潟工場にてバドミントンラケットの製造現場を見学した。ヨネックス株式会社の創業地が新潟県三島郡(現長岡市)ということもあり、創業から現在までの歴史とその経緯について学んだ後、最新の製造現場の中において機械化できない熟練技術者による手作業での工程についても詳細に説明いただいた。次の訪問先となる株式会社オーエックス新潟では、一般的な自走用車いすと競技用車いすの製造現場を見学した。こちらでも車いすフレームの金属加工では、機械化できない熟練技術者による手作業での工程を間近で見学することができ、カセサート大の学生と長岡技術科学大学の学生ともに大きな関心を抱いた様子であった。また、最新の競技用車いすの試乗も体験させていただいた。最後の施設見学では、新潟県長岡市を本拠地とするBリーグ所属新潟アルビレックスBBのホームアリーナとなる約5,000人収容可能なシティホールプラザアオーレ長岡を見学した。新潟県の歴史や文化を理解してもらうため、新潟県立歴史博物館と吉野川酒造にも訪問した。
■成果報告会・修了証授与式(10月22日)
成果報告会では、カセサート大の学生を3グループに分けて各実験データの分析に取り組んだ結果と本プログラム全体の感想も含めたプレゼンテーションを行い、長岡技術科学大学の教員と日本人学生との意見交換を実施した。最後に修了証授与式にて本プログラムの修了書が授与された。