2022年度 活動レポート 第56号:九州工業大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第056号 (Bコース)

ベトナムの若手研究者らとの共同研究プログラム

九州工業大学からの報告

 2022年11月4日から11月24日までベトナムのVAST−USTH(Vietnam National University, Hanoi University of Science)の教員1名と修士課程の大学院生1名、VAST−IET(Vietnam Academy of Science and Technology, Institute of Environmental Technology)の研究員2名の合計4名を共同研究活動コース(Bコース)で招へいしました。

 今回のプログラムの受入研究者は、VAST−USTHのDr. Namとバイオマス資源のカスケード利用に関して共同研究を進めています。2019年度のさくらサイエンスのプログラムでは、Dr. Namおよび修士課程の大学院生2名を招へいし、実施主担当者の研究室において実際に実験を行い、さらに九州工業大学における研究設備を確認し、継続した共同研究活動への発展のために研究環境を理解してもらいました。今回は、VAST−USTH からDr. Namの研究グループのDr. Thuと修士課程の大学院生1名に加え、VAST−IETから研究員2名を招へいしました。実施主担当者の研究室において植物由来炭素材料の作製と測定方法の指導、データの解析原理の説明、VAST−USTHの試料の測定、等を行いました。

 VAST−IETでは、ベトナムで深刻な環境問題となっている河川の水処理に関する研究を行っています。水処理に関する研究は、世界的に大きな関心事となっており、実用化できる経済性の成り立つ技術や材料が求められています。VAST−IETでは、水を浄化する技術の一つの候補として、安価で供給が容易な材料を吸着材として使用する吸着処理を検討しています。ベトナムを含む東南アジアにおいては、バイオマスが安価かつ豊富に調達可能です。そのため、バイオマスを原料として容易に製造できるバイオ炭を吸着材として利用することも候補の一つとして検討されています。そこで招へい者の研究室では、基礎実験として色素を含む水溶液に対してバイオ炭による吸着実験を行いました。

活動レポート写真1
バイオ炭で吸着後の溶液の吸光度の測定

 共同研究を進めているVAST−USTHのDr. Namの研究グループの試料について、招へい者や九州工業大学が保有する分析機器を用いて測定を行いました。TEMやXPSによる機器分析は九州工業大学の機器分析センターで行いました。ラマン測定は招へい者が保有する装置で行いました。これらの測定により得られたデータについて議論し、今後の共同研究の方向性を打ち合わせました。

活動レポート写真2
バイオ炭のラマン測定

 フィールド調査として、広島県の宮島にある厳島神社を訪問しました。厳島神社は日本でも有名な神社なので、日本の伝統や文化の紹介には適した場所であると考えて選定しました。訪問したときは紅葉の時期だったのでベトナムでは見られない秋の紅葉も紹介できました。厳島神社を訪問した後、広島市内に移動して、原爆ドーム、広島平和記念資料館、広島城、を訪問しました。招へい者たちも広島に原爆が投下されたことは知っており原爆ドームや資料の意味を理解していました。広島城では日本の城郭を訪問することで日本文化の一端を紹介しました。次に岡山市に移動し、岡山城と後楽園を訪問しました。岡山城も広島城と同様、ベトナムの城郭とは全く異なる様式であることを感じていたようでした。後楽園は日本有数の庭園なので、日本文化の一つである日本庭園を紹介しました。その後、倉敷市の美観地区を訪れてから小倉に戻りました。

活動レポート写真3
広島県宮島のフィールド調査

 残りの日程では、招へい者の研究室で実験を行うことにより理解した、招へい者が行うことができる実験や使用できる研究設備と、実験で得られたデータをもとに、VAST−USTHとVAST−IETのそれぞれについて、今後の共同研究の方向性について議論しました。その結果、今後の共同研究の基盤を構築しました。

 今回の事業により実施主担当者と招へい者の研究室の共同研究の進展のみならず、実施主担当者と親交のある日本の研究者との交流や日本文化への理解もすすむ成果を挙げられたと思います。