2022年度 活動レポート 第49号:和歌山県立医科大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第049号 (Aコース)

シンガポールの医学生らが関西の最先端がん治療研究を体験し、その源流を学ぶ

和歌山県立医科大学からの報告

 和歌山県立医科大学(和医大・医学部)は、さくらサイエンスプログラムの支援を受け、2022年12月7日~13日までの7日間、シンガポール・南洋理工大学・理学部・生物科学科において、がんの本態解明に関する研究を実施している、大学院生(4名)・ポスドク(2名)・研究者(1名)・教員(1名, Cheng Gee Koh准教授)の計8名を招へいした。滞在期間中に、和歌山県立医科大学(和医大)・医学部・薬学部・附属病院、大阪国際がんセンター(大阪市)で、がんの疾患メカニズムの解明を目指し、見学と討議・交流を行った。

 シンガポール・チャンギ国際空港から関西国際空港に早朝に到着し、JRを利用して和歌山駅まで移動した。駅前のホテルにチェックイン・荷物を預けた後に、1日目の主なスケジュールが始まった。まずJR紀三井寺駅近くの和医大・三葛キャンパスを訪問し、オリエンテーション、和医大の概要説明及び医学部の教養教育の施設見学を実施した。

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和歌山県立医科大学・三葛キャンパス前での集合写真

 その後、徳川御三家の一つである紀州藩の居城である和歌山城傍の、和医大・薬学部に移動し、薬学部・生薬天然物化学の田村理教授の研究室を訪問し、合同セミナーを実施した。田村理教授は「Search for promising biomolecules from natural resources」というタイトルで、Cheng Gee Koh准教授は「The multiple roles of POPX2 (CaMKP/PPM1F) phosphatase in cancer metastasis」というタイトルで講演をそれぞれ行い、植物由来の抗がん剤スクリーニング、脱リン酸化酵素が関与したがんの転移について議論を行った。

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和医大・薬学部内での集合写真

 2日目にはJR在来線を乗り継いで、特定機能病院に指定されている、大阪国際がんセンター(大阪市)を見学した。その後研究所に場所を移し、シンポジウムを実施した。今回のホストの赤澤隆チームリーダー(がん創薬部)に司会をお願いし、まず谷口直之所長の「研究所紹介と部門紹介(糖鎖オンコロジー部)」、「田原秀晃部長(がん創薬部)」、「東山繁樹部長(腫瘍増殖制御学部)」による部門紹介があった。その後Cheng Gee Koh准教授が1日目と同じタイトルのセミナーを行った。カルシウムシグナリングとがん転移の関係やPOPX2の基質であるp21-activated kinase (PAK)の、がん転移での役割について活発な議論が行われた。

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大阪国際がんセンターのセミナー後の集合写真

 研究所の見学後には、少彦名神社(神農さん・日本医薬の祖神)・くすりの道修町資料館・大阪城を訪問した。さらに日本の食文化を堪能するために、大阪市内のお寿司屋さんで、寿司と鯛シャブを堪能した。

 3日目は、和歌山県立医科大学・医学部・附属病院・腫瘍センターを訪問し、臓器横断的かつ職種横断的なチーム医療を学んだ。

 4日目は、吉野山(奈良県吉野郡吉野町)を訪問し、日本旅館に滞在した。吉野山は日本さくら名所100選に選定され、「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコの世界遺産に登録されている。吉野山の中心に位置する金峯山寺は修験道の聖地であり、今回のメンバー全員で、金峯山寺での夕座勤行に参加し、身も心も清められた。その後日本旅館で夕食の会席に舌鼓を打った。

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金峯山寺(金峯山修験本宗総本山)での集合写真

 5日目は和歌山に戻り、ホテルから徒歩圏内にある和歌山城等を散策した。

 6日目は、和医大・医学部・薬学部の職員・学生を交えて合同セミナーを実施した。、Cheng Gee Koh准教授、病理学講座(江帾正悟教授)・分子遺伝学講座(井上徳光教授)・生体調節機構研究部(改正恒康教授)の研究室の職員がプレゼンテーションを行った後に、南洋理工大学の大学院生及びポスドクが10分間の講演(がんの疾患メカニズムに関する)を行った。和医大側は、本年夏に海外の研究機関(ドイツ・イタリア)に数週間派遣された数名の学部学生(3年生)が、その体験談を紹介した。その後1年生・2年生の学部生が、自己紹介及び今後の将来展望について述べた。

 7日目早朝には、関西国際空港に移動され、午前の便でシンガポールに帰国された。

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和医大でのセミナー後の集合写真