2022年度 活動レポート 第30号:長崎大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第030号 (Aコース)

ベトナムの水質汚濁を改善するための膜分離技術を学ぶ

長崎大学からの報告

 長崎大学大学院工学研究科水環境科学コースは、令和4年11月7日~11月12日にベトナムのハノイ建設大学およびベトナム国家大学ホーチミン市校自然科学大学からの合計12名(教員2名、大学院生1名、学部生9名)を長崎に迎え、「ベトナムの水質汚濁を改善するための膜分離技術を学ぶ」と題した科学技術交流事業を実施した。近年ベトナムにおいては、未処理下水の放流や海水の河川遡上により水道水源の水質悪化が深刻化している。そこで、本交流事業を通して、ベトナムの大学の学生を招へいし、日本が世界トップのマーケットシェアおよび技術力を誇る「膜分離技術」の理解を深めてもらうことで、本コースへの修士課程への入学や日本企業への就職などを通した将来の再来日、また将来母国で水道事業に携わる際に日本企業と連携してプロジェクトを進行するきっかけにすることを趣旨とした。

 なお、逆浸透膜技術は、直径1nm以下の孔を持つ多孔体であり、水分子以外のほぼ全ての物質が除去可能であり、ナノろ過膜技術(孔径=1~2nm)は、低分子量物質(重金属や有機物)の除去能力が高く、汚染した河川水からも安全な飲料水を得ることが可能である。本事業では、膜処理技術全般を講義・演習・見学を通して知ることができるプログラム構成にした。

活動レポート写真1
佐世保市水道局山の田浄水場見学時の膜ろ過装置前の集合写真(左奥から、水道局職員、受入れ担当者、その他招へい者12名)

 まず、渡日前にオンラインおよびオンデマンドの講義を実施し、最低限必要な知識を習得してから来日するプログラムを組んだ。来日後は、講義で学んだことを実践するための膜ろ過装置を用いた処理試験実習を少人数(2~3人)のグループ分けをして重点的に行った。さらに、ハノイ建設大学およびベトナム国家大学ホーチミン市校自然科学大学それぞれの大学で2グループを形成してグループ課題として汚染された水道原水に対して有効な膜ろ過設備の基本設計演習を実施した。渡日前に講義を行っていたことから膜分離技術に対してある程度の予備知識を持っており、初日からグループ課題に対しても戸惑うことなく積極的に取り組んでいた。

 さらに、ほとんどの学生が英語での会話も苦にしていなかったため、技術的な質問も多々あった。交流2日目には、協和機電工業株式会社の時津事業所を訪問して開発部署や製造現場を見学した。交流3日目には、佐世保市水道局の山の田浄水場と広田浄水場を見学した。ベトナムに導入されていないセラミック膜ろ過設備などを直に見学することができた他、ベトナムと日本の水源の水質の違いを招へい者達が質問を通して直に確認するなど、自分たちの国に技術を導入した場合の立場に立って見学していることが分かった。

活動レポート写真2
協和機電工業の工場見学(白ヘルメット:招へい者学生)
活動レポート写真3
佐世保市水道局広田浄水場の着水井の見学

 最終日のセミナーでは、日本企業(三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社および協和機電工業株式会社)によるベトナムにおける事業および環境活動紹介の後、膜ろ過設備の基本設計に関するグループ課題の成果発表を行った。実質数日間の短いグループワークでありながら、膜ろ過技術を十分に理解した設計を行っていた。以上のことから、本プログラムが招へい者の知識と将来にとって非常に有意義なものであったと感じている。