2022年度 活動レポート 第29号:九州工業大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第029号 (Aコース)

環境ストレス耐性を向上させる植物バイオテクノロジー分野における研究交流

九州工業大学大学院生命体工学研究科 
池野 慎也さんからの報告

 令和4年9月25日から10月2日までの1週間、エジプト・アインシャムス大学から大学生2名、大学院生2名と引率教員1名の計5名を招へいして植物バイオテクノロジー分野における研究交流を実施しました。本事業では、植物のストレス耐性の向上技術や塩害や乾燥に強い植物の研究開発を見学・体験し、農業生産の安定化につながる日−埃国際共同研究開発への道筋を作ることを目指し活動に取り組みました。

 来日前にオンラインによる顔合わせを実施しました。初顔合わせとのことでお互いに最初は緊張しておりましたが、お互いの国の印象や知っていることを話してもらうことで次第に打ち解け、来日後の活動が円滑に進むことができたと思います。

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オンラインによる顔合わせと事前打ち合わせ

 9月25日に来日し、翌日26日から活動が始まりました。活動初日の午前は、引率教員のメトワリー先生にエジプトについてとアインシャムス大学とその研究の歴史についてレクチャーしていただきました。午後からは、生命体工学研究科のラボツアーを実施しました。当研究科はバイオ系の研究室のみならず生命体の巧みな現象や知見を生かした様々な分野(機械系、電気系、材料系、情報系)の研究室が所属しています。本事業内容に関りがある研究室やユニークな研究を行っている研究室を訪問しました。

 活動2日目は学生同士による研究紹介セミナーを行い、ディスカッションをしました。塩害や乾燥による被害は、我々には身近な問題ではないためピンとこないのですが、植物の生育におけるこの問題は世界共通の問題です。研究セミナーを通じて得られた意見交換は、活動5日目の協働学習につながりお互いに有意義な時間を過ごせました。

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研究ディスカッション(活動2日目)

 活動3日目は本学飯塚キャンパスに伺い、合成生物工学研究センターが主催する国際シンポジウムに発表参加しました。当センターは植物をはじめとした様々な生物種で利用できる汎用性の高い合成生物学の技術開発を行っています。シンポジウム終了後はセンターの構成研究室を訪問・見学し、合成生物学・植物バイオテクノロジー分野の最先端の技術に触れ、知見を深めることができました。

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国際シンポジウムでの講演

 活動4日目は循環型社会施設見学として北九州エコタウン・次世代エネルギーパークを訪問し、北九州市が推し進める環境技術を学習しました。また、午後は北九州市を代表する企業であるTOTO株式会社のミュージアムを訪問し、衛生陶器の技術の歴史とその最先端技術を学びました。その後、小倉城と小倉城庭園を訪れ、日本の歴史文化を体験し、自然と文化の薫りに浸かり、静かに落ち着いた時間を楽しむことができました。

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北九州エコタウンにて

 活動5日目は学生同士による協働学習を実施しました。2日目のディスカッションを通じてお互いの研究からどのようなコラボレーションが可能か、ブレインストーミングを実施しました。多くのアイデアが提案され、新たな目的や展望が挙げられるなどとても充実した協働学習であったと思います。

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協働学習:共同研究に向けてのブレインストーミング

 活動6日目は産業技術と歴史・自然科学の学外学習としていのちの旅博物館を訪問・見学し、日本の自然科学や産業がどのように発展してきたのかを体験学習しました。また、近接にあるこの春に移築・新設されたスペースLABOを訪れ、科学の面白さを体験し、その歴史について学びました。翌日10月2日に福岡空港からエジプトへ帰国の途に就きました。

 来日から帰国まで、過密なスケジュールであったにもかかわらず参加いただいたエジプトの学生さんは、意欲的に活動に取り組み、多くの方と話しあい、その姿から今後の共同研究への発展に大いに期待が持てました。また、この活動を通じて日本人大学院生にとっても、研究の考え方の相違を身近に感じることでグローバルな感性を身につけていただけたと思います。

 最後に、このような機会を与えていただいた「さくらサイエンスプログラム」、ご協力いただきました本学の教員・学生・事務の皆様に心からお礼を申し上げます。