2022年度 活動レポート 第28号:三重大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第028号 (Aコース)

科学人材養成のための小中学生を対象としたプログラムに関する研修

三重大学からの報告

 三重大学の協定校であるベトナムのホーチミン市師範大学で高校理科教員を目指す学生を対象とした理科教育研修プログラムを企画し、11月17日から11月24日までの8日間、10名の大学生と1名の引率教員を招へいしました。2015年度から7回目の実施であり、1回目の引率教員も私費で参加しました。また、昨年度はオンラインで実施しましたが、その時の参加者のうち4名が今回選ばれました。

 本学では、理系分野に高い意欲や優れた能力を有する全国の小学5・6年生および中学生を対象とした「ジュニアドクター育成塾(JST)」を運営するなど、理科教育の充実に力をいれて取り組んでいます。本プログラムでは、理科教員を目指す招へい者たちが三重県で行われている理科教育の現場を体験し、子どもたちの能力を最大限に引き出す指導法について思考を深めることを目的としました。

 10月26日にオンラインで今回のプログラム概要の説明と入国や滞在に関する準備状況の確認をしました。予定表や必要な資料はGmail SpacesやGoogle Driveで共有し、引率教員との綿密な連絡によって準備はスムーズに進みました。

 1日目の早朝に関西国際空港に到着後、津市内のホテルに移動し、プログラム概要を確認しました。午後からSSH校(スーパーサイエンスハイスクール)に指定されている三重県立津高等学校を訪問し、有機化学実験の授業参加や体験をしました。その後、科学部における天文、化学、生物、物理、数学の取組みを順番に紹介してもらいながら生徒と18時頃まで交流し、初日から18時までのハードなスタートとなりました。

 2日目は午前に三重県総合博物館の見学と、午後からSSHに指定されている三重県立四日市高等学校を訪問し、SSH探究活動を参観しました。生徒一人一人が課題を決めて取り組んでおり、物理、化学、生物の実験の様子、発表スライド作成の準備、英語による発表練習をみて、生徒の自主的な取り組みに驚いていました。交流会には20名以上の生徒が集まり、活発な話し合いが進みました。

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四日市高校における課題探求授業の参観と交流会

 3日目は、ジュニアドクター育成塾の講座に参加し、受講生の活動を見てもらいました。この日の講座は皇學館大学、鈴鹿高専、三重大学東紀州教育学舎の3会場で行われ、内容は物理、化学、生物であることから、招へい者の専門に分かれて各会場に移動しました。受講生が講座内容を理解して熱心に実験に取り組む様子を見て、どのようにして受講生を選抜したかなど質問がありました。英語の得意な受講生も多く、受講生との交流が予想以上に進みました。

 4日目は名古屋市科学館の見学をジュニアドクター育成塾の受講生15名と一緒に行いました。招へい者2名と受講生3名の5名がグループとなって、館内の体験活動を回りました。受講生のうち9名は小学生でしたが、招へい者は丁寧に受講生に接し、実験の意味など解説していました。受講生も積極的に招へい者とコミュニケーションをとりながら2時間ほど館内を回り、招へい者との別れを惜しんでいました。午後からは招へい者は展示内容を熱心に見学し、教材として役立てるためにたくさんの動画を記録していました。

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ジュニアドクター受講生と参加した名古屋市科学館における体験活動

 5日目は三重大学国際交流センターを表敬訪問し、金子センター長にお礼を述べ、滞在中の印象を学生が一人ずつ述べました。その後、教育学部の授業科目「小学校専門理科」の地学に参加しました。講師は、附属小学校の前田先生で、天文についていかに興味深く学ぶか、前田先生が考案した教材で活動するものでした。午後は授業科目「生物学実験」における種子観察で、学内を回りながら多くのの種子を採取して種子分散に関する特徴を学びました。

 6日目は三重大学附属小学校を訪問し、前日に地学の授業をしてくださった前田先生による授業を見学しました。前田先生のクラスには2名のジュニアドクター受講生がいて、二人とも名古屋市科学館の見学に参加していたことから、授業前には再度会えた嬉しさで盛り上がり、児童はクラスの様子を話していました。午後は「物理実験」と技術の「機械工学」に参加しました。機械工学の授業は「分解実習」で、廃棄されたモニター、掃除機、液晶プロジェクターなどを分解し、機能を実現するための材料、機構、構造を考えるものであり、STEM教育に関心のある招へい者は学生と一緒に熱心に取組んでいました。

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三重大学教育学部附属小学校の訪問と授業参観
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三重大学教育学部における「機械工学」の授業参観

 7日目は今回の経験のプレゼンを行いました。2名ずつのグループになって5件の発表があり、日本の科学教育が学校だけでなく、地域や科学館での体験を通じて行われていることを見ることができたことを語っていました。ジュニアドクターや科学館での小さい頃の科学体験活動が高校における課題探求に重要であることを報告していました。この日は、三重大学アカデミックフェアというものが開催されることから、招へい者による発表申し込みをしており、招へい者はポスターを作成して、午後はアカデミックフェアでポスター発表を行いました。その後大阪に移動し、歓送会を行って翌日、帰国しました

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最終報告会とアカデミックフェアでのポスター発表
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 招へい者はとても熱心なので、少しでも多くの教育現場を見てもらいたいという思いから、短期間で密度の高いプログラムになってしまいます。発表スライドやポスター作成もあることから、招へい者の睡眠時間は短かったようですが、全員が健康で無事にプログラムを終了できました。さくらサイエンスクラブを通じて、今回の体験を発信してくれることでしょう。

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