2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第024号 (Aコース)
SDGs達成に向けた先進農学研究体験プログラム
香川大学からの報告
2022年10月23日から29日の7日間、タイ、ベトナム、スペイン、インドネシア、台湾の5カ国・地域の8大学から11名の若手研究者(内訳:学部学生4名、大学院生4名、研究員2名、引率教員1名)が、香川大学農学部でさくらサイエンスプログラムの科学技術体験コースに参加しました。テーマは「SDGs達成に向けた先進農学研究体験プログラム」です。本コースでは、(1)SDGsの目標達成に関わる農学系の研究教育施設や民間企業の工場施設の見学、(2)香川大学農学部の研究室での実験実習体験および研究室メンバーとのディスカッション、を行いました。具体的な滞在日程は以下の通りです。
日程 | 活動内容 |
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10月23日 | 日本(関西、成田、羽田)の空港に到着、香川大学に移動、ガイダンス |
10月24日 | 開講式、香川大学農学部のラボツアー、香川大学インターナショナルオフィス表敬訪問、香川大学博物館の見学 |
10月25日 | 醤油製造工場、チョウザメ陸上養殖施設、香川大学希少糖生産ステーションの見学 |
10月26日 | 香川大学農学部の研究室での実験実習体験及び研究室メンバーとのディスカッション |
10月27日 | 香川大学農学部の研究室での実験実習体験及び研究室メンバーとのディスカッション |
10月28日 | 発表の準備、研修成果の発表会、閉講式 |
10月29日 | 各空港から帰国 |
(1)SDGsの目標達成に関わる農学系の研究教育施設や民間企業の工場施設の見学
研究教育施設としては香川大学博物館と香川大学希少糖生産ステーションを訪問しました。香川大学博物館では「発酵のめぐみ」という企画展を見学しました。伊藤文紀副館長から香川大学の研究者が関わった発酵研究や世界の発酵食品の歴史やコレクションについて説明を受けました。希少糖は自然界にごく微量しか存在しない単糖類です。いくつかの希少糖(D−プシコースなど)には、血糖値の上昇や脂肪蓄積の予防効果があり、アメリカ、日本など一部の国で販売が開始され、今後需要増加が期待されています。希少糖の大量生産方法の確立に世界で初めて成功した香川大学の希少糖生産拠点が希少糖生産ステーションです。香川大学国際希少糖研究教育機構の望月進准教授から希少糖の機能と生産方法について説明を受けました。
民間企業の工場視察は、東かがわ市の2社を訪問して行いました。
1社目は1753年から現在まで270年間醤油の製造販売を行っているかめびし屋((株)かめびし)です。同社は「むしろ麹法」という伝統的な醤油の製法で醤油をつくり続けており、店舗や醤油蔵など18棟の建造物が国の登録有形文化財に登録されています。同社の担当者から説明を受けながら、むしろ麹や醤油蔵を見学させていただきました。参加者はSDGsを意識した製法をしていることに驚いておりました。2社目は世界三大珍味のひとつキャビアの製造販売を手掛ける(株)CAVICです。参加者は板坂直樹社長からチョウザメの生物学的特徴を教えていただくとともに、陸上養殖の現場を見学させていただきました。
(2)香川大学農学部の研究室での実験実習体験及び研究室メンバーとのディスカッション
参加者11名は自分の研究に近い8つの研究室に分かれ2日間研究室に滞在しました。研究室の教員や学生との研究に関する意見交換を行ったり、研究室学生と一緒に実験や互いの研究紹介を行ったりなどして、親交を深めました。山口一岩研究室では、参加者が調査船に乗りこみ、瀬戸内海のベントス(底生生物)を回収して、沿岸海洋生態系の観察を行いました。石井統也研究室や小川雅廣研究室では参加者が研究室学生と一緒に食品の試作を行い、食品の物性測定を行いました。
10月28日には、参加学生が一人ずつ、今回の研修で学んだことを香川大学の教員や研究室学生およそ40名の前で発表しました。最後の閉校式では秋光和也農学部長からさくらサイエンスプログラムの修了証を受け取りました。
今回の交流プログラムは7日間と短いものでしたが、参加者のアンケート調査に、11名全員が非常に有意義で楽しかったとの感想を残しておりました。また、参加者のうち5名は、香川大学に正規留学生やポスドク、短期研究員として戻って来たいとの希望を持っていただきました。プログラム実施にあたりご支援いただいたJST、工場見学を受け入れてくださった(株)かめびし及び(株)CAVICの関係者の皆様、協力いただいた香川大学の関係教職員の皆様に深く感謝申し上げます。