2022年度 活動レポート 第22号:九州工業大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第022号 (Cコース)

次世代シーケンサーを高度活用した世界規模課題解決のための国際共同研究

九州工業大学大学院生命体工学研究科 
教授 前田 憲成さんからの報告

 2022年9月5日~14日までの10日間、九州工業大学大学院生命体工学研究科・前田研究室(微生物工学分野)にて、次世代シーケンサーオンサイト研修を行いました。このオンサイト活動に先立ち、2022年9月1日~2日まで、オンライン交流活動も実施しました。

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 フィリピン大学ディリマン校から3名、コロンビアサンタンデール工科大学から2名(うち1名は引率者)、メキシコ国立自治大学から2名(うち1名は引率者)、マレーシアのスルタンザイナルアビディン大学、スルタンイドリス教育大学、マレーシアプトラ大学、マレーシア国民大学の4機関から各2名、合わせて15名を海外から招へいするという交流活動であったため、新型コロナ検査キット、消毒薬の購入など、対応できる感染症対策を講じた上で活動を実施しました。

 9月5日に、招へい者を出迎え、その後空港から北九州市まで引率しました。コロンビア・メキシコ組の4名が昼過ぎに、フィリンピンからの3名は午後3時過ぎに、マレーシアからの8名が夜の9時頃に福岡空港に到着したため、受入側は3グループに分けて、出迎えの対応をしました。事前にオンライン交流にて顔合わせを行っていたため、到着時は円滑に招へい者を認識でき、速やかに合流することができました。

 その翌日からは実際に、次世代シーケンサー技術の研修を行いました。具体的には、9月6日の午前中は、自己紹介を兼ねたキックオフミーティング、午後は研究活動における倫理教育のほか、次世代シーケンサーの原理などを解説しました。

 9月7日からは、実際に技術研修を行い、7日は対象試料からのDNAおよびRNAの抽出、RNAに対しては逆転写作業、および濃度調整などを行いました。9月8日には、アンプリコンPCRによる標的DNA領域の増幅、クリーンナップ、クオリティチェック、タグメンテーション(インデックスPCRによるバーコード配列の付加)を実施しました。

 9月9日から9月11日にかけて、サンプルのクリーンナップ、プーリングしたライブラリー試料の変性処理、PhiXコントロールとの混合などの下処理を行った後に、次世代シーケンサーMiSeqによるシーケンシングを行いました。エラーが発生することなく、MiSeqが運転できることは、日ごろのMiSeq機器のメンテナンスがきちんと行われていること、そしてサンプルの前処理から運転までの作業が正確に行われていることが条件となります。したがって、無事にエラーが発生せずにMiSeqが稼働できたときは、参加者の皆はプレーシャーから解放され、安堵な心情となります。

 9月12日は、MiSeqで得られたシーケンスデータを解析する研修を行いました。Qiime2などの解析ツールを駆使して、試料中の微生物多様性を評価できるα多様性、試料間の種多様性の類似度を評価できるβ多様性、具体的な菌叢を解析しました。

 9月13日の午前中に、得られたシーケンスデータを実際に解析し、午後に解析できたところまでのデータを用いて活動成果報告会を行いました。その後は、修了書の贈呈および情報交換会を実施しました。そして、9月14日に、招へい者全員、母国に帰国しました。

活動レポート写真2

 この活動期間、招へい者全員が新型コロナウイルスに感染することなく、入国から帰国まで無事に活動を行うことができました。招へい者は、日本国への入国規制が緩和される前で、入国時にはPCRなどによる新型コロナウイルス陰性証明が必要であるなど、何かと不安と心労をかけたと思いますが、本活動前から活動後まで、協力的に対応していただきました。また、前田研究室の次世代シーケンサー研修に携わった日本人大学院生も、限られた時間の中で活動が終了できるように、念入りな下準備と感染症対策を厳密に行ってくれました。この活動に関わってくれたすべての方にこの書面の場を借りてお礼申し上げます。

 これまで、2年間、新型コロナウイルス感染症の流行により、オンライン交流活動を余儀なくされましたが、今回の対面での活動を客観的に見て、雑談などから日本人大学院生が英語でコミュニケーションを取る光景が多いように感じました。このような雑談も含めた多数の会話の機会が、日本人の国際マインド強化につながると確信しました。特に、今回関わった4名のM2の大学院生は、学部4年生の研究室配属時にコロナ禍に直面し、国際交流の機会がなく、2年半を過ごしてきました。大学院生活の中で、集大成を迎えていくこの時期にこのような経験を積めたことは、今後の人生の財産になるものと考えます。

 最後に、このような機会を与えてくださったさくらサイエンスプログラム実施機関であるJSTの関係者の皆様、またコロナ禍でハンドリングが容易ではない中、適切かつ真摯にご対応して下さりました本学学生交流課海外留学企画係のスタッフの皆様には、心より感謝しております。

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