2022年度 活動レポート 第18号:山梨大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第018号 (Aコース)

米国の大学生が山梨県の農業を体感
~日米双方の農業形態が抱える利点と問題点について考える~

山梨大学生命環境学位記
准教授 片岡 良太さんからの報告

 さくらサイエンスプログラムの科学技術体験コースにより、アメリカ・ホークアイコニュニティーカレッジの学生および教員が9月14日から19日にかけて来日し、山梨大学生命環境学部にて日米でつなぐ持続可能な土壌管理と農業形態について研修を行いました。本プログラムでは、山梨県の農業を体感してもらうことで、日米双方の農業形態の違いを実感してもらい、日米双方の農業形態が抱える利点と問題点を山梨大学の学生と議論することで新たな思考創出の機会を日米双方の学生に提供することを目的としています。

 まず、北杜市で操業している次世代園芸施設(トマト栽培)へ見学に行き、オランダの技術を取り入れた超効率的生産技術を学びました。山梨県は日本一の日射効率を誇り、多くの企業がスマートアグリを導入した生産施設を操業しています。今回訪れたのは、アグリマインドです。コンピュータ制御された温室では、およそ15mに成長し、戸愚呂を巻いたトマトが育っており、一同驚いた様子でした。

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アグリマインドにて

 次いで、有機JAS認証を先駆けて取り入れた養鶏場を訪れました。山梨県では、令和3年度にやまなしアニマルウェルフェア認証制度検討会議を設置し、全国の自治体では初となるアニマルウェルフェアの認証制度である「やまなしアニマルウェルフェア認証制度」を創設しています。今回訪れた黒富士農場では、自然と共生したストレスフリーの養鶏を目指しており、アニマルウェルフェアにも力をいれています。現在、山梨県が創設した認証制度には、7件の農場が認証を受けており、黒富士農場もその1つです。黒富士農場では、鶏の飼料にこだわっていること、ストレスフリーのため、鶏が穏やかなこと、鶏舎から出る鶏糞の堆肥化について学びました。プログラム参加者はアグリマインドや黒富士農場で大変興味深く聞き入っていました。

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黒富士農場にて
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 山梨県は狭い農地を効率良く活用した農業を実施していることから、アイオワ州で行われている大規模農業とは方法が大きく異なります。3日目の午前中は、環境科学科の学生実験室で、ホークアイの学生と本学の学生がお互いの農業について紹介し、本学の学生からは自身が行っている研究の紹介もなされました。その後、研究室を見学し、学生同士がたくさんコミュニケーションをとっていました。

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お互いの農業を紹介し、意見交換をしている様子

 また午後には、近年需要が増えているドローンを活用した農業運営について、本学小曲農業で実際に小型ドローンの操縦体験を交えて研修を行いました。山梨県では、果樹園の農薬散布にドローンを活用する実証実験を行っており、ドローンの活用事例は今後増加すると予想されます。ドローンの操縦体験をした後は、小曲農場の実習室に移動し、ドローン活用事例の紹介も行いました。ドローンにサーモカメラを搭載し、流域環境の野生動物調査や農場のぶどう畑の養分状態を調査する研究などドローン技術の可能性について意見交換を行いました。

 夕飯は意見交換会として、参加者全員と本学教員及び学生も交えて焼き肉を楽しみました。

 4日目には、富士五湖周辺に移動し、日本の農耕地の約半分を占める黒ボク土の母材である火山灰と富士山について解説し、アイオワに広がるモリソルとの違いについて議論しました。風穴洞では富士山が噴火した際流れ出た溶岩跡を目の当たりにし、土壌の生成について研修を行いました。

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風穴洞にて

 5日目は、台風が接近してあいにくの天気でしたが、新旧文化体験ということで、東京に赴き、未来館を訪れました。その後、浅草に移動し、日本の文化に触れました。

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浅草にて

 9日間のプログラムを通して、国際交流のための教材や研修プログラムをつくることができました。また、両大学の継続的な研究、教育交流についても話し合うことができたことも大きな成果でした。最後に多忙な中で多くの事務職員や教員が労力を費やしてくださり、研究、教育と国際交流が結び付いたさくらサイエンスプログラムが実施でき、本学にとっても良い経験になったと思っています。このように、本プログラムを成功裏に終えることができました。