2022年度 活動レポート 第16号:奈良女子大学

2022年度活動レポート(一般公募プログラム)第016号 (Aコース)

数理科学に関するバングラデシュとの学術交流ならびに高度人材育成基盤の持続的構築

奈良女子大学理学部・化学生物環境学科・環境科学コース 
教授 高須 夫悟さんからの報告

 2022年9月24日から9月30日にかけて、奈良女子大学の海外協定校であるバングラデシュのチッタゴン大学から学生10名(学部学生8名、大学院生2名)と教員1名を招へいし、科学技術体験コースによる学術交流プログラムを実施しました。奈良女子大学理学部・化学生物環境学科・環境科学コースで行っている数理的手法を用いた個体群動態の講義とプログラミング言語pythonを用いた数理モデルの数値シミュレーション実習、最終課題として参加者が自ら設定したテーマに関する数理モデル解析結果の発表、を柱とする学術交流と、奈良女子大学学生と英語による交流イベントを複数回実施し、チッタゴン大学との持続的学術交流基盤の強化を図りました。

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演習にて数理モデルの数値シミュレーションに取り組む参加者達

 学術交流の具体的内容は、非線形力学系としての個体群動態の数理モデルと計算機を用いた数値シミュレーション実習です。今回は参加者全てがラップトップPCを持参したため、データサイエンスの分野で一般的なpython言語を用いて講義で学んだ数理モデルの数値シミュレーションに取り組みました。実質5日間の講義・演習で身につけた知識と技術を使って、最終日に行う課題発表のテーマを参加者各自が設定しました。テーマが決まった後は参加者が個別に本学教員と議論を重ねて課題プレゼンテーションを仕上げました。このような「ミニ研究活動」に取り組んだことは、参加者達がチッタゴン大学において今後とりくむ研究活動を進める上で貴重な体験となったと思います。

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最終日の課題発表の一幕
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 学術交流以外の活動として、奈良女子大学の国際空間Coto Queにて、今回招へいした参加者達と本学学生が身近なテーマについてフリートークを行うイベントや本学学生が奈良公園を案内して日本文化などについて説明する機会を複数回設けました。これらのイベントでは日本人学生が英語で自分を表現し、同世代でもあるチッタゴン大学学生達と直に接することでバングラデシュについての理解を深めるとともに、海外留学への意識を高める効果があったと考えます。奈良女子大学は大学を挙げて学術交流の国際化に力を入れていますが、チッタゴン大学の学生を1週間本学に招へいすることで、本学学生にとっても国際化への意識の向上につながったと考えています。

 今回の招へいは当初7月下旬に実施することを計画していましたが、新型コロナ感染症による入国制限のため実施時期を9月に後ろ倒ししました。それでも9月24日の来日当時は入国前の陰性証明取得が必須であるなど、参加者全てが無事に来日・入国できるか不確定な状況でしたが、幸いにも全ての参加者が予定通り入国できたため、プログラムを滞りなく進めることが出来ました。

 本事業の支援によるチッタゴン大学からの招へいは今回で5度目となります。以前の招へいではチッタゴン大学からの参加者の多くは大学院生でしたが、今回はチッタゴン大学大学院への進学意欲を高めたいという先方の意向に沿って、8名の学部学生を招へいすることとなりました。バングラデシュに帰国後、今回の参加者から日本の大学への大学院留学についての問い合わせがあるなど、本プログラムへの参加によって日本への留学意識が高まったと感じています。また、今回招へいしたチッタゴン大学教員1名と本学教員複数との研究上の交流も行い、本学とチッタゴン大学の間で持続的な学術交流基盤を強化することが出来ました。本プログラムを支援していただいたJSTに厚く御礼申し上げるとともに、是非とさくらサイエンスプログラムを今後も継続して頂けることを強く希望します。

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プログラム修了後の招へい者全員の記念撮影