2021年度活動レポート(一般公募プログラム)第085号 (オンライン)
日本が誇る和食と“おもてなし”から学ぶ新しいエンターテイメントのカタチの創造
桜美林大学ビジネスマネジメント学群
准教授 尾川 佳子さんからの報告
【プログラム概要】
2022年2月4日】2月18日、義守大学(台湾)の学生19名、教員1名、サンウェイ大学(マレーシア)の学生18名、教員1名と、オンラインによる交流プログラムを実施した。
本プログラムは、東京オリンピック・パラリンピック誘致のきっかけにもなった、日本独自の「おもてなし」の精神や、その理念から派生する文化を、ユネスコ無形文化遺産にも登録された日本食や、日本企業が提唱する新たなレジャーの形でもあるマイクロツーリズムを通じて、レジャー産業やホスピタリティ産業(総称してエンターテイメント産業と定義)に関する学修をしている学生に、新たな知識を提供することを目的として計画した。そして、COVID−19の拡大によって、国内外の人の流れが停滞し、世界的に大打撃を受けたエンターテイメント産業を、withコロナ、afterコロナ時代に日本の強みをどのように活かし、V字回復させていくかを、講義や実習を通して学べるようなプログラムとして構成した。
【プログラム運営にあたっての懸念点とその対処方法】
本プログラムは当初対面型で実施予定であったが、COVID−19の影響により参加者を日本に誘致することができなくなってしまったため、4日間のオンラインプログラムに変更して運営をした。オンラインで、どこまで日本のおもてなしやマイクロツーリズムについて参加者に体感してもらいながら理解してもらえるかの不安もあり、参加者たちが得られるであろう成果も未知数であった。
そう言った懸念を打開するため、参加者たちがオンライン研修から“体験型”の学びが得られるよう、あらかじめ各派遣元大学に日本食を調理するための食材や、和食器を発送してオンライン調理実習を実施したり、オンライン高尾山ツアーなどを行った。さらに、フィールドワークで訪問予定であった場所に予めプログラムコーディネーターが訪問し、紹介動画を作成することによって、ゲストスピーカーからの講演内容の情景を分かりやすく伝えられるように工夫してプログラムを運営した。
【プログラムの運営成果】
そうした研修を運営した結果、各々の生活拠点を中心に据えたマイクロツーリズムをテーマとした最終プレゼンテーションの内容も、とても充実しており、コロナ禍でも自国の産業を盛り上げ、回復させられるような、地域に根差した独自の提案がされていた。
参加者のメジャーや学びの嗜好が本プログラムと合致していたこともあり、プログラム中はオンライン上でも積極的に質問が寄せられ、相互にコミュニケーションをとることができ、新たな知識と経験を提供できたと考えている。
プログラム後に実施したエバリュエーションでも、プログラム全般、担当教員、コーディネーターの評価のほぼすべてで平均4点以上を獲得することができた(5点満点、回答者20名)。一点のみ、研修のプログラムの運営環境の項目で、4点をわずかに下回ってしまったため、次回以降同様のプログラムをオンラインで運営する際は、プログラムの内容だけでなく配信環境にもより配慮し、参加しやすい環境を整えたい。
参加者からは本プログラムを終え、日本の文化・ホスピタリティ精神・地域に特化した産業などに対して、より一層興味関心が湧き、実際に日本に来日して本学で学びたいといった声もあった。今回プログラムに参加した両大学は、本学と同様に都市部にある大学であり、新型コロナウイルスによって受けた影響も近しいものがあった。そのような同環境下に置かれた者同士が、同じ課題を打開するために、共に学び考え、新たなアイディアを創出できたことは、本プログラムを運営して得られたとても大きな成果であったと考えている。
【今後の展望】
今回プログラムに参加した双方の大学は、本学のビジネスマネジメント学群との学びの親和性が非常に高く、今後もエンターテイメント、レジャー、ホスピタリティなどをキーに学生間交流を中心とした取り組みを進めていきたいと考えている。実際に、参加大学の一つのサンウェイ大学(マレーシア)とは、現在大学間協定がないが、先方の教員からはこのプログラムを機に将来的な提携を希望する声もあった。
文明や科学が発展進化を遂げる現代には、文化や感性の重要性がさらに問われていくと考えている。その意味でもサイエンスとホスピタリティは切り離して考えることではなく、未来を担う若者には異文化交流の中で目に見えるもの(文明・科学)だけでなく目に見えないもの(文化・ホスピタリティ)の大切さをお互いに理解し共有することが真の異文化交流とサスティナビリティに繋がるのではないだろうか。このプロジェクトが、それが実現できる一つのきっかけとなれば幸いであり、今後はオンラインでなく実地開催できるよう申請を継続し、相互の大学・学生間の交流を促進していく。