2021年度 活動レポート 第47号:山口大学

2021年度活動レポート(一般公募プログラム)第047号 (代替オンライン)

アジア6カ国・地域との遠隔国際交流プログラムを実施

山口大学大学院創成科学研究科 農学系学域
教授 執行 正義 さんからの報告

 山口大学大学院創成科学研究科農学系学域では、2021年10月9日から11月6日までの間、さくらサイエンスプランの支援により、6か国・地域(タイ、ベトナム、インドネシア、台湾、スリランカ、ミャンマー)の学術交流協定校である18大学から計98名の学生などを対象に遠隔国際交流プログラムを実施しました。

 我々は、ここ20年間に様々な国際拠点交流事業を通じて、ASEAN諸国の約40大学と生物資源を用いた共同研究を実施しており、熱帯性環境生物の資源開発に関する国際ネットワークの形成を推進しています。この度は、特に訪日経験がない学生や教員を対象に交流計画を立て、コロナ禍で留学の機会が閉ざされた交流協定締結校の関係者に本学の雰囲気と教員の研究内容を知ってもらう機会になればと思いプロジェクトを遂行しました。

 10月9日の初回には、宮田農学部長の開会挨拶を皮切りに開会式を開催し、オリエンテーション、さらには、九州大学名誉教授の伊東正一博士(農業経済学)に基調講演をお願いしました。本講演会には48名が参加し、グローバルな視点からみた食糧需給状況を健康食の普及と併せた理論展開がなされる非常にユニークな講演内容に多くの質問が寄せられました。その後の交流会には伊東先生にも参加頂き、対面の雰囲気に近い形での意見交換ができました。

学部長挨拶(左)と遠隔交流会の様子(右)

 その後、3~8回目からは特別講演とポスター発表者のショートトークを組み合せてイベントを実施し、総計261名が参加してくれました。世界各地からの講演を依頼できる遠隔交流の利点を活かし、トルコ、台湾、アルゼンチン等、そして国内から著名な研究者に最新の研究成果等を紹介して頂きました。特に、第5回目では、各種ビッグデータの情報解析を統計解析ソフトRで行うための遠隔講義を開催し、多くの参加者から高評価が得られました。

 ポスター発表には、21の研究課題がエントリーしました。ベトナム国家農業大、カセサート大、ボゴール農業大などから、それぞれ多数の大学院生や教員が近年の研究成果を発表しました。その中で、優れた研究成果を上げている2名に優秀ポスター発表賞を授与しました。

 8回目はJapan Dayと題し、2つの特別講演とバーチャル見学会を行いました。1つ目の講演は、本学から米国ケント州立大学へ派遣留学中の松永愛氏(人事課主任)に同国の大学教育制度を紹介いただくとともに、本学のアメリカ人大学院生を交えた討論会を行いました。多くの先進事例を学ぶことができ、山口大学の教育システム改善にも有用なイメージが掴めました。2つ目の講演では、本学農学部 柳由貴子准教授より山口県の国定公園・天然記念物になっている秋吉台を土壌学的な視点を交えて詳しく紹介して頂きました。秋吉台の成り立ちを学ぶことから自然環境保全の重要性を実感することができ、海外からの参加者に我が国固有の観光資源としての立ち位置を順序良く理解して頂くことができました。

松永氏(左)と柳准教授(右)の発表資料

 バーチャル見学会では、西日本最大級のシステム農場である(株)花の海の様子を動画で紹介しました。また、宇部市にある山口県産業技術センターも紹介し、日本酒の醸造に係わる先端工学技術を学んで頂けました。

(株)花の海のバーチャル見学会の様子

 さらに、Linc Bizを使って、山口大学や周辺の観光スポットの動画紹介サイトを準備し、視聴してもらいました。サイト情報の収集については、前出のアメリカ人留学生にやって頂きました。クールなサイトが多く、恐らく多くの方が山口に対する興味を深めて頂けたと思います。

 11月29日の最終日の最後の企画として、プログラムの目玉であるRemoによるバーチャル交流会を行いました。様々な国の教員や学生と意見交換ができ、日本への長期留学を考え始める学生がいることが分かりました。

 今回、さくらサイエンスプログラムからご支援頂いたことで、多くの大学と「熱帯生物資源」や「情報解析」を主たるテーマとして総合的に学習・議論する交流することができました。この度の一連の成果情報は英文報告書として取りまとめ、既に各協定校と共有済みです。これらも、この様な遠隔交流機会はあると思いますので、農学部の方では今後も活用できる一連のシステムやノウハウが蓄積できたと思われます。最後に、協力頂いた皆々様に感謝申し上げます。

Remoによる交流会の様子(左)と英文成果報告書(右)