2021年度 活動レポート 第27号:大阪市立大学

2021年度活動レポート(一般公募プログラム)第027号 (代替オンライン)

コミュニティ防災×ICT - 持続的な防災力向上の実践を学ぶ

大阪市立大学 都市防災教育研究センター所長 
三田村 宗樹さんからの報告

 2015年ネパール・グルカ地震によって、カトマンズでは大きな地震災害を被った。カトマンズは水害も頻発し、市民の防災への意識が近年高くなっているが、防災力向上を目指す手法や考え方などの充分な涵養がなされていない。これまで大阪市立大学都市防災教育研究センター(CERD)では、NPO法人ネパール避難所・防災教育支援の会(NEPA)との連携協定のもと2018年から協同してカトマンズ市内の中等教育学校に対して防災教育を実施してきた。

 本計画は、ネパールの若い世代に科学技術の多様な応用や防災関連技術への興味やそれに関与する動機付けを行うこと、若い世代の相互交流の発端の機会を与えることを目的としている。今回、これまで防災教育支援を行ってきた中・高生を招へいし、日本の科学技術を活用した防災関連の体験学習を通じて学び、SGH校であり、グローバル・コミュニケーション学習を行っている大阪教育大学附属高等学校平野校舎の高校生との活動交流会を対面で実施する予定であった。この計画を通じて、日本での各種の災害関連科学技術環境を認識してもらうとともに、ネパール国内に関わる災害関連のデータを利用してどのように活用できるかなどを検討しながら、情報技術の防災への展開の必要性と可能性を理解させることで防災面に寄与する若い世代を育成することとしていた。

 コロナ禍に伴い、日本へのネパールの学生たちを招へいすることがかなわず、招へい計画は辞退し、その代替え処置として、オンラインでのワークショップを実施することとした。ネパール・カトマンズと大阪との高校生参加のオンライン交流であるため、学校行事および時差(3時間15分)の関係から、土曜日の午後を利用したショートプログラムでの実施となった。30-40分の短い講義を大阪市立大学で行い、両国に関わる自然災害の自然環境の説明とコミュニティ防災の基本的考え方や日本での実施例を紹介したのち、ネパール・ノーベル・アカデミー(生徒11名及び教員2名の参加)の生徒から自然災害・人為災害に関する学習発表と、学校で行われているスカウト活動を通じた野外活動での災害時対応の学習や寄付・慈善活動を通じた地域交流を含めた取り組みが紹介された。その後、大阪教育大学附属高等学校平野校舎の生徒(4名)から防災研究の取り組み報告として、植物の根の水分保持力の比較実験の紹介があり、今後の土砂災害に関わる危険度評価に生かせるかの研究報告があった。いずれの発表においても、双方からの質疑が出され、活発な意見交換が行えた。

 ノーベル・アカデミーからは、今後の継続したこのような取り組みや対面での実施に向けた強い希望が出された。大阪教育大学附属高等学校平野校舎はSGHの取り組みを行っているが、コロナ禍での海外研修などが行われず、今回がはじめての国際交流でもあったが、大きな刺激を受けたとのことである。この交流をきっかけに、双方の学校が直接的に学生間の交流をオンラインで進めることとなった。

オンラインでの参加者
大阪市立大学の講義
ノーベル・アカデミーの発表
大阪教育大学附属高等学校平野校舎の発表