2018年度活動レポート(一般公募コース)第294号
「光は量子力学に従うか?」を検証する日中科学技術交流
岡山大学からの報告
事業目的
本交流計画の眼目は、中国の若手学生に基礎物理学の最前線を俯瞰する講義、あるいはレーザー技術やそれを用いた原子物理の実験コースを提供し、もって日中科学技術交流を目指すことにあります。具体的には、3年3段階の実験を経て「光は量子力学に従うか」を実験的に検証し、最先端物理学を体験することを目指しています。今回の交流では、蘭州大学・核科学技術学院(中国甘粛省)の学生及び引率教員の総計11名が来日しました。実施時期は2018年11月13日より11月22日までの10日間です。
実際の交流の初日となる第2日目では、オリエンテーションの後、まず自己紹介を行い、その後交流会を持ちました。初対面にも関わりなく日本側学生教職員ともすぐに打ちとけあい、交流を深めました。
3日目は、2つの講義の後、3つの小グループに分かれ、レーザーの自作に挑戦しまた。半田付に初挑戦の学生も存在したため不具合も散見されましたが、無事レーザー発振に成功しました。
第4日目は一旦実験を休み、兵庫県にある高輝度放射光施設(Spring-8)及び自由電子X線レーザー装置(SACLA)を見学しました。Spring-8のビームラインで岡山大学の院生より、実際の実験状況の説明を受け、また加速器も見学することもできて、貴重な体験となりました。
第5日目では、アルミ箔・カッターナイフ及び移動ステージを用いて、スリット間隔の分かった二重スリットを製作。これと自作レーザーを使って、ヤングの干渉実験を行い、レーザーの波長を測定しました。
第6日目は再度実験に戻り、レーザーをパルス運転するためのパルス回路を製作しました。これによりレーザー光の強度やパルス幅が可変となりました。
第7日目は、光検出器の読み出し回路を製作しました。用いた光検出器は、MPPC (Multi-Pixel Photon Counter)と呼ばれるガイガーモードAPDをマルチピクセル化したフォトンカウンティング (光子計測)デバイスで、単一光子の検出も可能となります。この装置を使い、レーザーから出射される光子の数分布が、ポアソン分布に従うことを確認しました。この過程でポアソン分布の意味や使い方なども学びました。
第8日目及び第9日目は、以上製作した器具を使い、単一光子によるヤングの干渉実験を行いました。この測定が今回の眼目ですが、予期せぬ雑音に悩まされ、夜遅くまで奮闘しました。
9日目午後には、実験結果の報告会を催し、各グループからの実験結果を持ち寄り、実験の総括を行いました。中国の学生たちにとり挑戦的な実験が続きましたが、非常に充実した10日間を提供できたと考えています。