2018年度 活動レポート 第189号:富山大学

2018年度活動レポート(一般公募コース)第189号

ミャンマー産天然資源からの創薬シードの探索を向上させるためのヤンゴン大学との研究交流

富山大学和漢医薬学総合研究所からの報告

「さくらサイエンスプログラム」により、平成30年10月1日から10月9日まで、ミャンマー・ヤンゴン大学化学部から3名の大学院生と引率の教員として同大学化学部長が来日しました。本プログラムは、ミャンマーの天然薬物研究を担う大学院生が我が国の天然物化学研究を体験することにより、ミャンマーの天然物化学に関する研究水準を向上させ、ミャンマー国内における創薬研究の発展に資することを目的に実施しました。

今年度は、既にメールにて昨年度の本事業における進捗状況の確認と今年度の実験の打合せを行い、受け入れ研究者側で細胞毒性試験に必要な細胞を既に準備していたため、10月2日の初日から、ミャンマーの薬用植物抽出エキスから分画した粗精製液のヒトがん細胞に対する細胞毒性試験を開始しました。

また、今年度は、生物活性測定の方法論の獲得により興味を持ってもらうため、ミャンマーの招へい者ら自身の試料についても、細胞毒性試験を実施しました。本学研究員がヒトがん細胞への粗精製液投与の方法を実演した後、招へい者らがその操作を行いました。学生たちはピペット操作が思うようにできないながらも、細胞毒性試験の操作に慎重に取り組んでいました。また、同日の午後には、抗菌・抗真菌活性測定の準備も終わり、抗菌・抗真菌活性測定の測定を開始しました。

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招へい者らによる細胞毒性試験の準備

2日目は、前日に始めた抗菌・抗真菌活性の結果を確認しました。また、この日は、本学の民族薬物資料館を見学し、薬都富山の歴史と伝統、和漢薬を初めとする世界の伝統薬物や漢方薬について学びました。今年度の学生は、生薬についての知識が極めて深く、資料館の展示生薬や漢方配合薬について多くの質問をしていました。この日は、日本と自国との伝統薬物に対する概念の相違点や類似点などを学ぶことができた1日となりました。

写真2
本学民族薬物資料館見学

3日目は、まず、細胞毒性試験の結果を確認しました。粗精製液には極めて強い細胞毒性が認められ、招へい者らは、ミャンマーの植物から抗がん剤のシードになる化合物を単離できるのではないかと期待に胸をふくらませていました。その後、化合物の精製を開始し、最終日前日の9日目までこの操作を続けました。

最初の3日間は、オープンカラムを用いて精製を行いました。昨年度は、化合物を精製するために、このオープンカラムによる精製しかできませんでしたが、今年度の学生たちはこの操作については既に経験・熟知していたため、昨年度よりも効果的にオープンカラムによる精製を進めることができ、4日目からは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いての化合物の精製に進むことができました。

学生たちは、HPLCを使用するのは初めてであるため緊張していましたが、化合物をさらに高純度に精製できたことを喜んでいました。しかし、時間の都合上、化合物の化学構造を決定するまでには至らず、より効率的に実験を進めるさらなる工夫が必要であることが今後の課題として残されました。

写真3
化合物の粗精製
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HPLCを用いた化合物の精製

6日目には、医薬品製造メーカーである廣貫堂の資料館を見学しました。廣貫堂資料館では、今はありませんが、ミャンマーにも廣貫堂支社があったことを知り、感銘を受けていました。この日は、台風の影響で天候が良くなかったため、当初予定していた和漢薬製造販売の老舗である池田屋安兵衛商店への見学は諦めましたが、薬都 富山の所以を学ぶ良い機会となりました。

最終日は、来年の本事業の打合せを行いました。その後、修了式で森田教授から各人に修了証が授与されました。また、アンケートでは、全員が今回の訪日に対して「非常に満足」と答えてくれました。「さくらサイエンスプログラム」により、とても有意義な国際交流の機会をいただいたことに、心より感謝申し上げます。

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修了式にて