2018年度活動レポート(一般公募コース)第183号
日本の最先端膜分離技術を使ってベトナムの水環境汚染や水資源不足に挑む
長崎大学からの報告
長崎大学大学院工学研究科国際水環境工学コースは、平成30年10月22日(月)~10月28日(日)にベトナム国家大学ホーチミン市校工科大学環境自然資源学部からの代表10名(教員1名、学生9名)を長崎に迎え、「日本の最先端膜分離技術を使ってベトナムの水環境汚染や水資源不足に挑む」と題した科学技術交流事業を実施しました。
ベトナムでは特にホーチミン市を含むメコンデルタ地域において、未処理下水の放流による河川水汚染や海水遡上による河川水への塩水混入など水道水水源の水質悪化が深刻化してきています。一方、日本が世界トップの技術力を誇る「逆浸透膜」は水処理技術の中でも最高位の浄化技術であり、河川水水質に関わらず高い安全性を持つ水道水を生産することが可能です。このような背景から、本交流事業では、ベトナム南部最高位のホーチミン市工科大学の学生を招へいし、日本の最先端水処理技術の知識と理解を深めてもらうことで、本コースへの修士課程への入学や日本企業への就職など将来の再来日や、将来母国で水道事業に携わる際に日本企業と連携してプロジェクトを進行するきっかけにすることを趣旨としました。
本事業では、膜処理技術全般を講義・実習・見学を通して知ることができるプログラム構成にしました。午前中は大学教員からの講義を実施し、午後からはその講義で学んだことを実践するために実際の膜(精密ろ過膜、逆浸透膜)を使った水処理試験の実習を実施しました。
講義については、学生の専門が環境工学であることから膜分離技術を使った水処理に対する理解が早く、特に膜分離技術以外の水質に関わる質問も数多く受けました。また、福岡地区水道企業団 海水淡水化センター(まみずピア)における見学では、特に造水コストやエネルギーに関する質問が多くありました。また、協和機電工業株式会社の事業所訪問では、同社開発担当が返答に困るような膜の素材選択理由や膜寿命に関する質問も多くありました。
招へいした教員によると、ホーチミン市校工科大学ではより実用的な教育を行っているそうで、実際にエンジニアとして設計した場合の課題を考えながら知識を吸収していることを強く感じました。
受入れ側の課題としては、福岡までの移動を考えると1日の見学場所を2か所に限る必要がありましたが、近場でもう少し多くの現場を見ることで、どう水処理が行われているかをさらに知ってもらう機会を作った方がよかったのではないかと感じました。来年度の事業にて見学コースを変えるなどして課題に対応したいと思います。
最後に、本事業の遂行に多大なご協力いただいた関係者(長崎県文化観光国際部国際課、福岡地区水道企業団、日立造船株式会社、協和機電工業株式会社)の皆様に厚くお礼を申し上げます。